【スポーツ】大関陥落…霧島の歯車はなぜ狂ったのか? 復活へのカギを師匠・音羽山親方が明かす
大相撲夏場所にかど番で臨んだ大関霧島(28)=音羽山=が途中休場して負け越し、7月の名古屋場所で大関から陥落することになった。千秋楽まで綱とりの可能性を残した初場所からわずか2場所。首のケガを発端にして陥った負の連鎖、そして復活へのカギとは。師匠となった音羽山親方(元横綱鶴竜)が明かした。
別人のようだった。4連敗発進だった春場所は5勝10敗。夏場所は1勝5敗で迎えた7日目から休場。霧島らしさは影を潜めたまま、大関陥落となった。キッカケは春場所前の稽古で負った首のケガ。出場可能な程度の故障から、どんどん歯車が狂っていった。
「首を痛めたことが響いて、負けていって、じわじわメンタルをやられて、自信を持てなくなっていったのでは」。音羽山親方はそう分析する。責任感もあって出場を続けて負けが込む中で「心も折れてくる。自分を見失っちゃった」と泥沼にはまり込んでいった。
要因は他にもあった。首に不安を抱えながら、霧島は筋力トレーニングでパワーアップをもくろんでいた。万全でない中で進化を求めたことが凶と出た。師匠は「完全に力任せの相撲をとろうとしていた。新しいことに挑戦して、さらに自分が成長していこうと思った中で、勘違いが生まれちゃった」と指摘。「本来の動きのある反応のいい相撲がとれていない。左右の動きとかが鈍くなっていた」と振り返った。
崩れてしまった霧島の相撲。音羽山親方は「もう一度、初心を思い出してね。稽古に対する姿勢、人との接し方、勝負に対する気持ち。自分が何をやってきたか、どんな相撲をとってきたか、見つめ直す必要がある」と、復活のカギを原点回帰に求める。休場後、以前と現在の取組を確認した霧島も「全然違った」と衝撃を受けていたという。
本来の動きの速い相撲を取り戻す。そのためには「やっぱり土俵の中の稽古が一番。筋トレもいいけど、それ以上に今まで通りの稽古もやらないとダメってこと。それに気付いたと思う」。基本の大事さを師匠は強調する。同時に稽古の中身も要求した。夏場所前は番数をこなしていたが「量は戻ってきたけど全然、質がない」と苦言。「あんなに稽古場じゃ負けちゃいけない。上を目指していく人だったら特に、隙を見せちゃいけない。相手に『勝てない』って思わせるのが大事」。横綱大関なら、稽古で圧倒してかなわないという意識を相手に植え付ける-。そんな厳しさも必要だとした。
霧島は夏場所10日目の21日に退院。翌朝から稽古場に下りて体を動かし始めたという。音羽山親方は「そんなに時間はない。10番(勝つこと)はそう簡単じゃない」と、大関復帰の条件を名古屋場所でクリアする難しさを認める。一方で「腐るのも立ち上がるのもすべて本人次第。貴重な経験だと思ってね、前向きにまたやるしかない」と復活への期待を込めた。同じモンゴル出身の師匠の教えを胸に刻んで、霧島は大関の座を取り戻す戦いに向かう。(デイリースポーツ・藤田昌央)