【野球】なぜ阪神・青柳は3度も2軍降格になったのか 2年連続開幕投手が陥った負のループ 復調のカギはどこに
2年連続で開幕投手を務めた阪神・青柳晃洋投手(30)が1日、今季3度目となる2軍落ちとなった。ここまで8試合に登板して1勝3敗、防御率3・83。アレンパの使者はなぜこれほどまでに苦しんでいるのだろうか。
今春キャンプを視察した際、阪神OBの中田良弘氏は「今年の青柳はいいよ。ボールのキレ、勢い、質がいい。コントロールもいい」と活躍を信じて疑わなかった。3試合に登板したオープン戦は防御率1・29。開幕に向けて体内時計の針をしっかり合わせられていると思った。
巨人との開幕戦では5回5安打3失点で敗戦投手になったが、4月5日のヤクルト戦は6回3安打3失点(2自責)、同12日の中日戦では7回6安打2失点。4度目の先発となった同19日の中日戦で6回6安打無失点で今季初勝利。防御率も2・63。5日のヤクルト戦こそ6四死球と荒れたが、制球面も比較的安定しているように見えた。
だが、同26日のヤクルト戦で四回途中7安打2四球5失点で2敗目を喫すると、岡田監督は出場選手登録抹消を決断。5月10日に再登録されたが、同日のDeNA戦は5回4安打5四死球3失点。同17日のヤクルト戦は6回5安打5四死球4失点で3敗目を喫し、翌日に抹消となった。同31日のロッテ戦で復帰登板を果たしたが、4回8安打1四球3失点。翌1日に3度目の抹消となった。
中田氏は青柳の不調の原因のひとつに「心の乱れ」を挙げる。「2年連続最多勝を挙げた時は、荒れ球を相手打者が怖がっていたコントロールに改善が見られた。それが去年ぐらいからあまりに四隅を狙いすぎて、ボールとジャッジされたケースで判定に引っ張られることが増えた。心の乱れがボールの乱れにつながっているように映った」と指摘する。
続けて「下から力のあるボールを投げるだけで魅力的なのに、理想を追い求めすぎたことが逆に自分を追い込む結果となって、心のコントロールも乱している。あの投げ方なら四隅を狙わなくても、ストライクゾーン内にアバウトに投げられれば相手バッターは十分に嫌がる。かつてはヤクルトの山田や巨人の坂本だったりが青柳の先発時にはスタメンを外れることがあった。せっかく相手が嫌がってくれてるのに、自分から荒々しさを消してしまったから、バッターは青柳への恐怖心を持ってないと感じるぐらいスイングしている」と分析した。
かつて中田氏が青柳をインタビューした際、右腕は「僕は打たれても、際どい球をボールと判定されても引きずらないんですよ」と自己分析していたというが、中田氏は「今年に関して言えば、自分に苦しいジャッジをされた場面で引きずっているような表情が出ちゃってるよね。それは自分が今、次の球で同じところにコントロールできる自信がないと言っているようなもの」と語った。
改善策はあるのか。中田氏は「まだコントロールが安定しないというイメージがあった2021年から2年連続で最多勝を取った時のように、細かなコントロールじゃなくてまずは力のあるボールで勝負することじゃないかな。もう一度、自分の武器、特徴というものを再認識することが大事。復活といえば大げさだけど、やり返せるピッチャーだからね」と、制球面において完璧を追い求めすぎないことが復調のカギになると位置づけた。
青柳、伊藤将という左右の柱を欠きながら、先発陣では才木、西勇、ビーズリー、大竹、村上の奮闘もあって、チームは26勝23敗4分けの貯金3。3位だが、首位・巨人に0・5ゲーム差の位置につけている。残り90試合。青柳の力が必要となる時は必ず訪れる。(デイリースポーツ・鈴木健一)