【野球】なぜ急降下?打線低調で貯金が底を突いた阪神にOBが提言「初球からスイングする積極的な仕掛け」「足を絡めた攻撃を」
「阪神1-4楽天」(6日、甲子園球場)
岡田阪神が今季初の同一カード3連敗を喫し、最大7を数えた貯金がついに底を突いた。本拠地甲子園でまさかの6連敗。とにかく打たない、打てない、得点が入らない。なぜ、昨年の日本一チームは苦境にあえいでいるのだろうか。
異変は初回に起こった。西勇が先頭の小郷に四球。制球に自信を持つ16年目のベテラン右腕が初回先頭打者に四球を与えるのは、2020年7月18日の中日戦以来4年ぶりの出来事だった。1死から辰己の二塁打を挟んだ二、三塁から鈴木大に先制の2点右前適時打。6月4試合の平均得点が1・5の打線にとっては、一般的に挽回可能と思える2点が重い失点になった。
三回にも王者らしからぬシーンが生まれた。梅野の左翼線二塁打を起点とした1死三塁から、西勇が反撃の中前適時打。1点差に追い上げた一打に今季最多の4万2625人で埋まったスタンドは大いに沸いた。だが、次打者の中野が遊邪飛。1ボールからの142キロ直球。理想は安打。最低でも一塁走者の投手・西勇と入れ替わる打撃結果が求められた打席で、力ない打球が三塁後方に上がった。続く前川は8球粘ったが空振り三振。うちファウルが4度。2死とあって、そのたびにスタートを切らなければならなかった。
直後の四回。1死二塁から三塁線を襲った阿部の打球を渡辺が好捕したが、2死二塁からマウンド前に転がった小深田の打球をファンブル。打球処理が手に付かず焦って一塁悪送球。4回7安打4失点で2敗目を喫した5月30日の日本ハム戦でもバント処理から三塁に悪送球。西勇にしては珍しい2試合連続失策で自らのバットで生んだはずのリズムを失い、申告敬遠を挟んで投手の藤井に右前適時打。4回までに4失点。5月19日のヤクルト戦で7得点して以来、13試合連続で5得点以下の打線にとっては、3点のビハインドはとてつもなく重かった。
岡田監督は「もうええやん。(貯金が)ゼロになったから。明日から開幕するんやから。みんな毎日切り替えてやろうとしてるんやから」と、なかなか苦境を打開できない重い敗戦にも努めて前を向いた。
佐藤輝、ノイジー、青柳、伊藤将に続いて、大山、ゲラも2軍落ち。昨年の18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一を支えた主力メンバーが1軍から姿を消した。戦力ダウンは否めない中、昨年は当たり前のようにできていたことが実践できていない光景を目にする機会も増えた。
戦況を苦しくさせている最たる要因は貧打以外の何物でもない。これまでは少ないリードを救援陣が必死に守ってきた。それでも、ゲラが3試合連続失点、岩崎も直近7試合で1試合おきに失点して敗戦につながりだした中、阪神OBの中田良弘氏は別の要因も指摘した。
「去年は数多くのフォアボールを選んだことが勝利につながったけど、今年はそれを踏まえて相手投手が振ってこないと思って初球からストライクを取りに来る投球をしてる。だけど、阪神打者は簡単に初球を見送って投手に有利なカウントを作られるなど、対応が後手に回っている。こんなに打線が不調だからこそ、積極的な仕掛けが局面を打開する一策になると思う」
昨年のデータを踏まえた上での配球。苦境を切り開くためには、各打者がカウント的にも精神的も追い込まれていないファーストストライクをスイングし、少しでも多くの安打を重ね、プレッシャーを与えていくことで、相手投手の配球が昨年に似たものになっていく可能性がある。
中田氏は続けて「元々岡田監督はエンドランより確実性を重視した犠打が多いけど、最近は足を絡めた攻撃も少なくなってるよね。チャンスで打てないのなら、足で局面を動かすことも必要になってくるんじゃないか」と指摘した。
昨年はリーグトップの79盗塁をマークしたが、今季はここまでリーグ最少の17盗塁。近本が8盗塁でリーグトップに立っているが、2勝9敗で4カード連続負け越しとなった直近11試合での盗塁数は「2」だ。
昨年は7勝10敗1分けだった交流戦で、今年は1勝7敗とさらに苦しみを味わっている。7日の西武戦では、5月12日に出場選手登録を抹消されていた伊藤将が約1カ月ぶりに1軍で先発し、同15日に抹消となっていた佐藤輝も1軍復帰した。勝率5割からの再起戦。勢いを得る分岐点とすることができるだろうか。(デイリースポーツ・鈴木健一)