【スポーツ】4大会連続五輪出場へ陸上・飯塚翔太の現在地 リオ五輪銀“リレー侍”32歳に訪れた変化と特別な思いとは
開幕まで50日を切ったパリ五輪。陸上の代表選考も大詰めで、日本選手権(27~30日、新潟)での活躍が五輪切符への鍵を握る。男子短距離では、16年リオ五輪400メートルリレー銀メダリストの飯塚翔太(32)=ミズノ=が、日本短距離界では朝原宣治氏以来となる4大会連続の五輪出場を目指している。ベテランの現在地と、夢舞台への熱い思いについて迫った。
4大会連続五輪出場の偉業へ自然体で挑む。飯塚は五輪選考を兼ねた6月末の日本選手権の目標を問われると、「優勝ですね。優勝を目指してオリンピック内定を決めたいと思います。楽しみです」と爽やかに言い切った。
日本短距離界の大ベテランだ。初めて五輪出場したのは12年ロンドン五輪。16年リオ五輪では400メートルリレーで銀メダルを獲得し、自国開催となった21年東京五輪にも出場した。日本選手権は200メートルで13年に初優勝すると、16、18、20年と4度制覇。19年世界選手権で1600メートルリレーに出場するなど、個人&リレーで活躍して確固たる実績を積み重ねてきた。
世界と戦い続け、気付けば32歳。「寝たら次の日(の疲労)も何もなくなっている」学生時代とは違う。体に気を使うことが増え、練習での変化もあった。東京五輪まで1人で練習していたが、現在は大学の後輩などと鍛錬することが増えた。
「1人だと、やっぱり考えちゃう。自分が速いかどうかが分かんないんですよ、感覚でしかないんで。でも誰かと走ってると、勝ち負けとか、引き離したとか、そこで判断ができる。狂いにくくなるっていうか、その調整がきくんですよ。競い合って日々燃えている。そこが一番大きいです」
常に最良を求め、若手に刺激をもらって勝負勘を磨く。そして、五輪への熱意は昔から変わらない。27日から4日間開催される日本選手権では、前半2日間に大本命の200メートルに出場予定。後半2日間の100メートルも状態次第では出場を考えている。400メートル&1600メートルリレーにも「任された役割は全力でやります」と強い意欲を示した。
リレーには特別な思いがある。「運動会のリレーみたいなもんですよね。最後、全部終わったら『よしっ、リレーだ!』と。楽しいですよ。一番盛り上がるんで」。多くの大会では終盤に行われており、パリ五輪でも同様。その“お祭り感”も活力になっている。
25日に33度目の誕生日を迎える。国際大会では「これが最後」と話す海外選手を見る機会も増えた。「やっぱり限られている」と有限な時間を痛感することもあるが、決して焦りはしない。
「僕は明日の練習のことで頭がいっぱいで、それをずっとやっている。広く考えるとよく分かんなくなっちゃうんで、一個一個をやってるって感じですかね」
現在は目の前の日本選手権に向けて「80~90%」の状態から仕上げの段階に入っている。個人種目では参加標準記録を突破した上で優勝すれば即時内定、リレー選考においても同大会の結果が重要となる。幾度も経験した五輪選考は、いつも「スタートラインに立ったときに、燃えたぎる」-。33歳の熱烈な走りに期待したい。(デイリースポーツ・田中亜実)
◆飯塚翔太(いいづか・しょうた)1991年6月25日、静岡県御前崎市出身。藤枝明誠高3年時の2009年に国体100メートルで優勝。中大に進学し、10年世界ジュニア選手権200メートルでは日本人初の金メダルを獲得。16年日本選手権200メートルで当時の日本歴代2位となる20秒11をマーク。同年リオ五輪の男子400メートルリレーでは、2走として銀メダルを獲得した。趣味はゲーム、座右の銘は「一喜一憂しない」。185センチ、80キロ。