【スポーツ】バドミントン日本代表・朴監督が五輪前に「厳しい」と異例の悲観会見 予算不足で直前合宿中止、世代交代、メダル候補故障の三重苦

 バドミントン日本代表の朴柱奉監督がこのほど、パリ五輪を前に報道陣への取材対応を行ったが「厳しい」「きつい五輪になる」など芳しくない現状を吐露する異例の会見となった。他国の隆盛による相対的な地位低下や、男子シングルス元世界王者の桃田賢斗(NTT東日本)の落選など主力が世代交代を迎えたこともあるが、日本協会の不祥事に端を発した予算不足の余波で、大会直前の代表合宿が一部とはいえ中止に追い込まれたことは大きな衝撃を与えた。

 パリ五輪への展望を語る場で、朴監督から現状に対するため息が漏れた。「全種目メダルのチャンスはギリギリあるが、厳しいは厳しい」。東京五輪では全5種目に金メダル候補を擁し「金3個を含むメダル6個」と目標を掲げたが、結果的には混合ダブルスの銅メダル1個と振るわない結果に終わった。「パリ五輪はリベンジしたい気持ちで頑張っているが、厳しい」。実直な指揮官とあって、本音が口をついた。

 東京五輪前は直近の世界王者を2組抱えたが、昨年の世界選手権は8年ぶりに金メダルなし。世界ランクも下降気味で「トータルで日本のレベルが東京五輪よりはダウンした」と吐露した。それでも女子シングルスのエース山口茜、混合ダブルスの渡辺勇大、東野有紗組をメダルの有力候補に挙げたが、その山口と東野も大会直前に故障を抱えるなど不遇が重なる。

 さらに、強化現場の焦燥を駆り立てるのは五輪直前の代表合宿の一部中止だった。日本協会が前体制だった2022年度に発覚した公金横領と組織的隠ぺいなどの不祥事の影響で、日本オリンピック委員会(JOC)などから交付される強化費を削られる厳しい財政状況が続き、24年度の日本代表の強化予算は5億円カットの約3億円にまで激減。今年4月以降に予定していた代表合宿は既に2回が取りやめとなり、計2回の五輪直前合宿も6月28日からの1回目が中止。7月11~20日の最終合宿が唯一の機会となり、朴監督は「本当にショック。現場の意見を伝えたが、予定通りのプログラムができず残念」とやり場のない憤りをにじませた。

 直前合宿中止の影響は計り知れない。04年の朴監督就任以降、日本代表は右肩上がりで飛躍したが、要因の一つは地獄の猛練習だといわれる。スタミナと脚力をつけるため合宿では吐くほど追い込み、筋肉痛のまま遠征の飛行機に乗り込むのも日常茶飯事。チーム一丸で強豪国に一泡吹かせるという雰囲気が上昇気流となり成長を遂げ、その一つの到達点が16年リオ五輪女子ダブルスの高橋礼華、松友美佐紀ペアの金メダルだった。

 東京五輪直前も約1カ月間の代表合宿を敢行したが、多くの金メダル候補を抱え「強豪国」と化した3年前は、コロナ禍の影響もあってか、ケガ防止のために全体的にセーブしているように見えたと指摘する声もある。結果的に本番は振るわない成績となったが、直前合宿が与える影響の大きさをうかがわせた。

 合宿の代替として担当コーチが各所属に赴き、個別指導を行う。協会と現場との合意というが、練習やトレーニングだけでなく、食事、ケア、施設全体の五輪ムードなど、集団としてリベンジに向かう有形無形のカギを握っていたはずの強化プランが、あろうことか身内のガバナンス不全の余波により貫徹できず、結果責任を負う指揮官の無念は察するに余りある。

 五輪だけが全てではないが、4年に一度、これほど大きな注目が集まる好機はない。主力の多くが集大成の時期を迎え、日本協会が組織的再生を図る苦境の中で、日本バドミントン界の底力が試される舞台になりそうだ。(デイリースポーツ・藤川資野)

 ◆朴柱奉(ぱく・じゅぼん)1964年12月5日、韓国出身。10歳でバドミントンを始め、現役時代は主にダブルスで活躍。韓国代表として世界選手権を5度制し、92年バルセロナ五輪男子ダブルスで金メダル、96年アトランタ五輪は混合ダブルス銀メダルに輝いた。引退後は指導者となり、2004年11月から日本代表監督に就任。183センチ。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

インサイド最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス