【野球】なぜ阪神・岡田監督はサヨナラ勝ちに喜ばず激怒したのか 「ひどいなあ、しかし」「勝ったとかは、そんなん何もないわ」と憤慨

 「阪神2-1日本ハム」(18日、甲子園球場)

 雨天中止の振替試合。一般的には空席の目立つ試合になることが多いが、チケットは前売り完売で4万2601人のファンがスタンドを埋めた。日本ハム・新庄監督の人気も相まって満員御礼となった一戦は延長十一回に及ぶ熱戦となり、相手バッテリーのサインミス(記録は暴投)で阪神が今季2度目のサヨナラ勝ちを収めた。だが、岡田監督は7勝11敗と苦しんだ交流戦最終戦を勝利で飾れたことを心の底から喜ぶことはなく、激怒していた。一体、なぜなのだろうか。

 「ひどいなあ、しかし。こんなにミスするんやな。勝ったとか、そんなん何もないわ」。最後は相手のミスで勝った試合だったが、阪神にもミスが続出していた。

 細野-進藤の新人バッテリーに四回2死まで完全投球を許していた。四球、暴投、安打で無死一、三塁の先制機を迎えた五回、岡田監督が仕掛けた。梅野への指示はセーフティースクイズだったが、一、三塁のライン際に転がすことができなかった。まともに投手の前に飛び、勢いも強かった。

 セーフティースクイズは一般的なスクイズとは異なり、投手が投げた瞬間にスタートを切らず、打球が転がったのを確認してから本塁へ向かう。打球方向、強さ、スタートを切れたタイミング…。この基本事項を踏まえれば、三塁走者の前川は無理に本塁に突入する必要はなく、1死二、三塁で小幡というシチュエーションに持ち込めば良かった。だが、三本間で挟まれ、無死一、三塁から先制点のもくろみが一転して、無得点で1死一、二塁へと変わった。岡田監督は「正面だったら別にスタート切らなくていいじゃないですか」と判断ミスを嘆いた。

 小幡が四球を選んで1死満塁となり、岡田監督はさらに仕掛けた。5回2安打無失点の村上に代打・原口を告げた。自身4連敗中で5試合勝ち星から見放されている昨年のMVP右腕に白星をつけてあげたいという親心であり、リーグ戦再開まで2日間の休養日があるという日程面もあって、惜しみなく中継ぎ陣をつぎ込める環境面もあった。

 原口は右翼ファウルグラウンドへの飛球。ライン際ではなく、早い段階でファウルと認識できたはずだから、無理に捕球しないだろうと思われたが、右翼・万波は一塁フェンス側に体を向けながら捕球。体勢は万全ではなく、スムーズに送球に移れる姿勢でもなかった。だが、三塁走者の森下はタッチアップに踏み切れなかった。

 岡田監督は「いい当たりじゃなかったけど、ファウルフライでも打って。あそこで(点を)取っていたら、もう2点取れているところやけどね、走塁の面を普通にやればね。あの体勢で捕って投げれるか?ホームにストライク。何考えてるんや、ホンマ。簡単やんか、行け、言うたら終わりやんか。行くか、行かんかやんか、走塁なんか。行く勇気がないわけやろ、結局は。コーチも行かす勇気がないんやろ、藤本が止めてるんやろ」と苦言を呈した。藤本三塁コーチからすれば、飛距離、強肩の万波、次打者が今のチームで一番信頼できる近本ということを考えた可能性もある、だが、岡田監督は万波の捕球態勢、好投の村上に勝ち星をつけるために積極的に動いた代打策、チーム全体が決定打を欠く現状を踏まえれば、2死満塁で近本に託すのではなく、タッチアップで本塁を狙うべきだと語気を強めた。

 2死満塁から近本が先制の中前適時打を放ったが、二塁走者の梅野が2点目のホームに帰ってこられなかった。「あんなん、完璧ミスやん。2アウトで、満塁でセンター前のゴロのヒットで何でよう帰ってけえへんの」。2点目を取れなかったことで延長戦にもつれたこともあり、首をかしげるしかなかった。

 桐敷が代打・清宮に同点打を許した直後の七回1死一、二塁では、近本の右翼への飛球で二塁走者の小幡が三塁にタッチアップできなかった。2死となって中野は詰まった遊飛に倒れたが、三塁に進んでいれば、相手バッテリーにプレッシャーをかけられていた場面でもあった。

 岡田監督は「だから結局は役割というかね、ランナー出たらひとつでも前の塁とか、それが仕事なわけやから。そんなん当たり前のことやんか。ヒット打てと言うてないんやから。それができないんやからなあ」と表情が晴れることはなかった。

 7勝11敗で貯金を4つ減らす形となったが、32勝30敗4分けの貯金2で、首位・広島とは2・5ゲーム差の単独2位に浮上した。21日のDeNA戦からリーグ戦が再開となる。交流戦前から決定打を欠き、得点力不足に泣く打線が一気に良化する兆しは今のところ薄い。それでも、二回に前川が左翼ファウルゾーンへの飛球をダイビングキャッチし、延長十一回1死では、佐藤輝が三塁前への五十幡のセーフティーバントを素手でつかみ、絶妙な送球で快足ランナーの出塁を防ぐなど、打てなければ点を与えないという“掟”は守った。では、打てなくても点を取るためにはどうすればよいのか。改めて考えさせられる夜になった。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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