【野球】ヤクルト・奥川の復活星支えた同期の“長武コンビ” 固い絆で“3人の夢”実現へ 5年目で3人同じ舞台に
ヤクルトの奥川恭伸投手(23)が14日のオリックス戦(京セラ)で挙げた、980日ぶりの涙の復活勝利。「後ろを見渡したら、同期の二人がいた」と二遊間を組んだ長岡秀樹内野手(22)、武岡龍世内野手(23)は同い年の同期入団で心の支えにもなった。そこには絆がある。“3人の夢”が始まった。
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それぞれの思いを抱えながら、グラウンドに立っていた。3人には同い年で同期入団という固い絆がある。近道に落とし穴、回り道もした。だからこそ、互いを指針にたどり着いた舞台は格別な景色を見せてくれた。
ピンチになるたび、マウンドには小さな輪ができる。「頑張れ」、「粘っていこうな」。さまざまな言葉で鼓舞し合い、寄り添うかのように最後まで奥川の隣にいたのは二遊間コンビだった。
二回。奥川が好フィールディングで併殺打に打ち取って2死としたが、杉本の打球をショートの長岡が内野安打とした。「足が滑ってツーバウンドで投げちゃったので。それを西野さんにつながれてピンチになった。『ごめん』とは言いに行ったんですけど」と振り返る。セカンドの武岡は「僕は僕で、正直そんな余裕もなくて」と苦笑い。皆、必死だった。
19年度ドラフトで一緒にプロの扉を開いた、まさに“戦友”のような仲間だ。2軍で一緒に汗を流した日も、悔しさに唇をかんだ日もある。ここまでかかった時間は実に5年。長岡は笑った。「いつかは(3人で)できるんだろうなって甘く考えていたんですけど、正直。プロの厳しさを痛感しながら、5年目になってやっと立てた。何かやっぱりみんな頑張ったなと思いながら」。待ちわびていた全員がそろった日。始まりの日だ。
「時間がかかった」と言う長岡に対し、武岡は「2人のデビューが早かったので、僕だけ残されていた感じが強かったんです」と同期の存在を励みにはい上がってきた。大卒で入団した大西も含めた同期会は、今年2月に初めて開催された。19日には2度目が行われ、焼き肉をほおばった。全員が一軍にいてこそ実現する会は、これからも長く続いていくのだろう。
長岡が懐かしんだ。20年9月26日。寮の自室に明かりがついていることを不信に思いながら、扉を開いた。「『誕生日おめでとう』って。2人でケーキを買ってくれていたのを覚えていますね」。同期で語らった記憶や思い出はない。だが、たとえ言葉にしなくても互いの夢は自然と重なり合っていく。続く未来が必ずあると、信じている。(デイリースポーツ・松井美里)