【スポーツ】なぜ?大逆転でパリ五輪決めた堀米雄斗、一気に転落した西矢椛 東京金メダリスト2人の明暗がここまで分かれた理由とは

 (左から)堀米雄斗、西矢椛
 悔しがる西矢椛(共同)
 パリ五輪出場を決めた堀米雄斗(共同)
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 約2年にわたって行われたスケートボードのパリ五輪代表選考は、23日に最終戦が幕を閉じた。ストリートで男子の堀米雄斗(三井住友DSアセットマネジメント)は五輪切符をつかみ、女子の西矢椛(サンリオ)は出場権を逃した。東京五輪金メダリスト2人は、なぜここまで明暗が分かれたのか-。

 いつものクールな表情が、この日ばかりは喜びで崩れた。堀米は五輪出場圏外の日本勢5番手で、パリ五輪予選シリーズ最終戦に出場。苦手なラン(45秒間で技を繰り出す種目)で2位につけると、一発技のベストトリックでは驚異の97・10点をたたき出し、優勝した。下位に甘んじれば五輪消滅だった試合で大逆転。執念でパリ行きの切符をつかんだ。

 一方『13歳、真夏の大冒険』の実況を受けて自国の祭典を沸かせた西矢は、15位に沈んだ。2試合連続の準決勝敗退となり、五輪出場は消滅。今年5月まで日本勢1番手をキープしていたが、わずか2試合で実力を発揮できなかっただけで夢舞台への道が途絶えた。

 崖っぷちから大逆転した堀米と、一気に転落した西矢。なぜスケートボード初代五輪金メダリストの2人で、ここまで明暗が分かれたのか。それは今回のパリ五輪レースの仕組みにあった。

 出場権は世界ランキングポイント形式で争われ、各国上位3人に与えられる。レース期間は2022年6月から、24年6月まで開催された全8大会。世界選手権などを含めた前半6大会を「フェーズ1」、今年5月末から始まった五輪予選シリーズ2試合を「フェーズ2」と設定された。

 「フェーズ1」と「2」の一番の違いは獲得できるポイントの差。フェーズ1の大会の優勝者が5万点(世界選手権は8万点)を得られるのに対し、フェーズ2の優勝点は26万点もあった。

 この約5倍の点差設定が、選手たちの明暗を分けた。男子で言えば「フェーズ1」を終えた時点で世界ランク1位だった白井空良は、約18万点。世界ランク1位でも、「フェーズ2」の大会優勝者以下の点数しか「フェーズ1」で稼げなかった。女子では「フェーズ1」で約12万点しか稼いでいなかった吉沢恋(ここ)が、「フェーズ2」の2試合で3位、1位の成績を残し、西矢らを“ごぼう抜き”した。

 五輪レース前に大会ごとの獲得ポイントは発表されていたため公平性は保たれてはいるが、約2年あった「フェーズ1」で積み重ねた点を帳消しにしてしまう、「フェーズ2」のポイント設定は極端すぎるように思う。例えるなら、たちの悪いクイズ番組。「最終問題に正解した人には100億万点です!」と番組を盛り上げようとする司会者の声が聞こえてきそうだ。

 競技年齢が若く、新星がどんどん出てくるスケートボード。残り2試合で逆転できてしまう五輪レースの仕組みは、一発逆転の希望があり観戦している側も見応えがあるかもしれないが、約2年で安定した成績を残してきた選手たちにとっては気の毒のようにも感じた。(デイリースポーツ・谷凌弥)

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