【野球】阪神・岡田監督「今までの0とはちょっと違うよな」完封負けも見えた兆し「ファウルを見なさい」6月に急逝した名スコアラーの教え

 「阪神0-1中日」(25日、倉敷マスカットスタジアム)

 阪神は今季10度目の完封負けで連敗。首位・広島とは3ゲーム差に広がったが、試合後、岡田彰布監督は「今までの0とはちょっと違うよな」という言葉を報道陣に残した。

 「いやいや、内容的にはあれや、最近ではまだ良かったよ、今日は」。確かに打撃内容を見ていると、各打者がストレートを引っ張り込むシーンが多かった。ここまで直球に差し込まれ、変化球に対応できずに打ち取られる場面が目立っていた阪神打線。初回には「あっ」と思わせるシーンもあった。

 指揮官自ら直接指導に乗り出すなど、打撃フォームの修正に取り組んでいる森下。1死一塁で迎えた第1打席、カウント1-2からの4球目、内角147キロをきれいに引っ張り抜いた。打球は強烈な勢いで左翼へ飛んだが、ポールの左側に切れるファウル。それでも岡山のスタンドのファンが大きく沸いたシーンだった。

 最終的に5球目のチェンジアップを打たされ遊ゴロに倒れたが、これまでなかなか見られなかったファウルに感じた。打者が痛烈に引っ張ったファウルは相手投手に考えさせることができる。「ボールが走っていないのでは?」「なぜタイミングがあったのか?」。対して逆方向へのファウルは「球威が勝っている」「打者のバットが振れていない」となる。

 「選手を見るときはファウルを見ておくと、いろんなことが分かるよ。だからファウルを見なさい」

 阪神担当時代、宜野座のバックネット裏でこう記者に教えてくれた名スコアラーがいた。今から13年前の2011年6月28日、当時チーフスコアラーを務め、遠征先の富山で急逝した渡辺長助さん。54歳だった。現役時代に捕手として活躍し、引退後はバッテリーコーチやスコアラーを歴任。2003年からチーフスコアラーに就任し、2度の優勝に大きく貢献した。

 いろんなことを勉強させてもらった中、森下のファウルを見た時に「あっ」と思ったのは、きっと渡辺さんの言葉が頭に浮かんだからだろう。まるでスタンドに突き刺さるかのような痛烈な引っ張り込んだファウル。差し込まれることなく、ポイントを前に出してとらえないと、インサイドの直球をあそこまできれいにはじき返せない。最終的に結果で判断されるプロ野球の世界だが、これまでとは違う変化だった。

 これが指揮官の目にも一つの兆しとして映ったのだろうか。試合前のフリー打撃についても「良かった。久しぶりになあ」と評していた。完封負けでも前を向ける内容。そう感じ取ったからこそ「今までの0とはちょっと違うよな」という言葉に変わったのかもしれない。

 岡田監督もコーチ時代、そして第一次政権で渡辺さんと一緒に戦った。西宮市内で行われた葬儀の際にはオリックスの監督を務めていたが、京セラドームでの試合後、斎場へ駆けつけ話を聞いたことを覚えている。

 表情には悲しみがにじみ「ミーティングでこう攻めるとか決めつけてよう言うとったよ。選手が迷わんようにな。おれも『負けたらスコアラーの責任やで』って言うたけど、それだけ信念持ってやっていた」と故人をしのんだ岡田監督。チームのため、選手のため、懸命に仕事をしていた名スコアラーの急逝からもう13年の月日が流れようとしている。

 「野手の方が明日からどういう感じでできるかやろなあ」と中日戦後に語った指揮官。見えた兆しは本物かどうか-。ここからのゲームにかかっている。(デイリースポーツ・重松健三)

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