【野球】渡辺&井上を1軍で活躍させた阪神・北川2軍打撃コーチの残留練習

 ファームから1軍へ上がってきた選手がよく口にする人がいる。「ペイさんに教えてもらって…」。マージャンを知らない若手記者たちの頭には?マークが浮かぶ。「昔からですよ。東南西北のペイ(北)。先輩にはペイ、後輩からはペイさんって呼ばれて」。このあだ名の主、阪神・北川博敏2軍打撃コーチ(52)が命名の由来を教えてくれた。

 ペイさんのおかげもあり、1軍で活躍しているのが渡辺。春先は調子が上がらず、開幕は2軍スタート。ウエスタンでも結果が残せなかった。1軍開幕日の3月29日。この日が転機だった。2軍本隊が福岡遠征の中、渡辺は鳴尾浜で残留練習を行った。

 北川コーチが振り返る。「あの時はあまりにも(状態が)悪いから残ってやった。結局1日しかできなかったけど、その1日も濃い内容で」。調子がいい時と悪い時の状態を比較しながら、打撃動画を撮った。ただバットを振るだけではなく、一振りにこだわり、丁寧に時間をかけた。

 「ナベ(渡辺)の場合は言ったことがどハマりしすぎた。ハッて昔の自分を思い出したんだろうね」

 北川コーチはオリックス、ヤクルトでも打撃コーチを務め、阪神では21、22年に1軍打撃コーチも任された。昨年から再び2軍を担当。1、2軍の役割は「全然違う」と言う。「2軍だから思い切って変えられる。ボロボロになって来る子が多い。だから逆に思い切ったことにチャレンジできるし、取り組むこともできるよね」。1軍は即結果が求められる。2軍では時間をかけられるからこそ、細かい部分まで指導ができている。

 特に大事にしているのが、渡辺もよみがえらせた残留練習。チーム本隊が遠征へ向かう中、鳴尾浜に居残りで練習を行うことだ。「僕らコーチもみんながいたら、みんなを見ないといけない。でも(居残り選手を)ピックアップしたら、その選手にかける時間が増えるからね」。普段は見えないことやできないことを徹底してできる。「残留は大事だなと思いますね」とうなずいた。

 今季は貧打に苦しみ、入れ替えも激しくなっている。渡辺はチャンスをつかみ、井上も昇格してすぐは爪痕を残した。佐藤輝や大山、ノイジーらも降格を経験。豊田もファームで結果を残して、プロ初安打をマークした。今後も2軍での取り組みが鍵を握っているのは間違いない。北川コーチら2軍スタッフの腕の見せどころでもある。

 2軍は選手とコーチの距離が近いように感じる。52歳の北川コーチのことを10代の若手も「ペイさん」と呼ぶ。「そっちの方が気楽ですし、こっちも接しやすくなる。フレンドリーにいけるんでね」。2軍から救世主が登場すればチームの士気はさらに高まる。(デイリースポーツ・今西大翔)

 ◇北川 博敏(きたがわ・ひろとし)1972年5月27日生まれ、52歳。兵庫県出身。現役時代は右投げ右打ちの内野手。大宮東から日大を経て、94年度ドラフト2位で阪神入団。2001年近鉄移籍。近鉄消滅後の分配ドラフトで05年からオリックスに在籍し12年現役引退。オリックス、ヤクルトでのコーチを経て、20年に阪神2軍打撃コーチ就任。21、22年に1軍担当。23年から再び2軍担当を務める。

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