【野球】広島・大瀬良の“無双”の理由 自己ワースト11敗の昨季から遂げた大変貌
広島・大瀬良大地投手(33)が開幕から完璧な投球を続けている。6月7日にノーヒットノーランを達成するなど、ここまで4勝0敗、防御率0・80。現在35回1/3を無失点中と出色の数字が並ぶ。自己ワースト11敗を記録した昨年からの変貌。その裏にあった本人の“自己改革”に迫った。(データはJapan Baseball Data)
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文句なしの投球は首位に立つチーム状況と無関係ではない。今季、大瀬良が先発した12試合でチームは9勝1敗2分けの好成績。特に右打者を圧倒している点が目立つ。対右打者の直球の被打率は3日時点で・125。昨年の同時期に・333だったことを考えれば、良化ぶりは顕著だ。
その理由に大瀬良は「『シュートがどこかで来るのでは』とか、踏み込めなくなっている部分が大きいんじゃないですかね。カットボールと似た球速帯でシュート、フォークがあるので(打者は)その辺を待っていたら、それより速い球になかなか対応できていないという感じかな。反応を見ていると」と分析した。
6月29日の巨人戦では七回、岡本和に145キロ直球を左翼線に運ばれたが、今季は右打者に直球を引っ張られる痛打が極めて少ない。「やっぱり(味方の)守備がいいから、無理に三振を取りにいかなくてもそっちの(打たせて取る)方がアウトを取る確率が高いかなと思い始めて」と話す。
その思考法に、昨年はなれない自分がいた。「(去年は)怖かった。長打を打たれるのが嫌とか」。昨季の被本塁打数はリーグ3位タイの15本、22年はリーグ最多の18本だった。際どいコースを慎重に攻めて、ボール先行。結果、打者有利の状況になっていた。
「『できるだけ早い段階で投手有利のカウントを作れるように努力するには、どうしたらいいかな』と。守備がいいから最初からストライクゾーンに散ってくれたらと思って」。今季まだ被弾がない理由の一つが、割り切った大胆な考え。昨年抱けなかった意識の変化が躍進を支えている。
直球の最速はここまで150キロで平均球速は145キロ。ただ本人は球速に執着しない。「『求めるところ、そこじゃない気がするな』と思うようになって」。今季途中から意識を変えたという。
「今は先発でも150キロ中盤を投げる投手が多い。同じようなところを目指していっても“埋もれちゃうな”と。違う道で、この1軍の世界で生き残っていく方向を探ってみようと思えた。(味方の)守備がいいというのがその契機。守ってもらいながら、1試合のゲームをチームみんなでつくっていけたらいい」
不本意な一年を過ごし、勝利への渇望は増幅した。昨秋には3度目の右肘手術。苦しい時を乗り越えて今がある。「球速とかの自己満足より、ゲームをつくれてチームが勝っているこの現状の方が、はるかに僕は喜びがあって楽しい。この2年そういうのが少なかったから、余計にそういうモノに飢えている部分がある」。“自己改革”の先にあった絶好調ぶり。頼もしい大黒柱が夏場も新井カープを支えていく。(デイリースポーツ・向 亮祐)
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