【野球】なぜ今年の阪神は接戦が多いのか 横綱野球で勝ちを重ねた昨年との違いとは 評論家が分析
「阪神4-1ヤクルト」(10日、甲子園球場)
阪神が今季2度目の4連勝で首位・巨人に0・5ゲーム差に迫った。この日はプロ初スタメンとなった野口のプロ初タイムリーで同点に追いつき、ヤクルト・奥川の暴投で勝ち越し、さらに内野ゴロ間、坂本の適時二塁打で4点を奪い、七回突入時に3点差をつける久しぶりにセーフティーリードの展開だったが、なぜ今年の阪神は接戦が多いのだろうか。
その要因のひとつに初回の攻撃が挙げられる。この日もそうだった。初回、先頭の近本が四球を選び、1死から前川も四球で歩いた。1死一、二塁の先制機。奥川は変化球の制球が定まらず、付け込む隙は多分にあった。だが、大山は真ん中付近に入った初球の直球系のボールを見逃すと、カウント2-1と打者有利の状況から、外角低めのボール気味の球に手を出して三ゴロ併殺。奥川に立ち直るキッカケを与えてしまった。
18年ぶりのリーグ優勝を飾った昨年、阪神は143試合中38試合で初回得点を奪った。確率にして26・6%。実に4試合に1試合を超える割合で、立ち上がりの相手投手を捕まえていた。勝率も26勝10敗2分けで72・2%と高い数字を誇った。
だが今年、ここまで81試合を消化して、初回得点は10度にとどまっている。確率にして12・3%。昨年比で約半減。勝率は7勝2敗1分けで昨季を上回る77・8%を誇っているのだが、6月16日のソフトバンク戦で前川がグランドスラムを放って以来実に16試合、リーグ戦再開後は一度も初回得点がないのだ。
6月27日の中日戦では無死一、三塁の絶好機を迎えながら、森下が空振り三振、大山が遊ゴロ併殺で無得点。7月4日の広島戦では2死二塁の場面で大山が二ゴロ。同7日のDeNA戦でも、無死一、三塁から豊田と大山が連続空振り三振、佐藤輝の四球を挟んで前川も空振り三振で無得点に終わっている。
阪神OBの中田良弘氏は「特に大山に当てはまることが多かったんだけど、ファーストストライクを見送る場面が多かった。最近は振るケースも増えてきているけど。狙い球と違った、狙ってるコースと違った、いろんなことが考えられるけど、見ている側からすると、どうも消極的な姿勢に見えてしまう。去年、リーグ最多の四球数を選んだことで、今年は相手投手が初球からどんどんストライクを投げ込んでくるケースがすごく増えてる。四球を選ぶのは決して悪い事ではないけど、投手目線で言えば、4番としての怖さというものを今年は昨年ほど感じないかな。精神的に構えてしまって、チャンスの場面なのに、いつの間にか追い込まれているという印象が強い。それで、初回に点が取れないことで、試合が重くなってしまうことが多いよね」と分析した。
大山だけでなく、好機におけるミスショットも目立つ。アウトにはならなくても、甘い球を仕留め損ねたファウルは印象に残る。
佐藤輝、大山、森下、ノイジーら、昨季のリーグ優勝をけん引したメンバーが次々に2軍落ちを経験した今季。それでも、底を極めた時期に比べれば安打数は増え、比例して得点機も増してきている。そこに初回得点のパーセンテージが上がってくれば、上位4球団が1ゲーム差にひしめく大混戦を抜け出す近道になる。(デイリースポーツ・鈴木健一)