【野球】巨人・坂本 優勝戦線のカギを握る男に何が起きたのか 阿部監督&桑田2軍監督が語る打開策

 現役最多安打の男が苦しんでいる。巨人の坂本勇人内野手(35)が6月26日、打撃不振で出場選手登録を抹消された。故障以外での再調整は、入団1年目の07年シーズン以来。7月12日に再昇格したが、完全復活には至っていない。次々と歴代記録を更新する希代の安打製造機に何が起きたのか。阿部慎之助監督(45)、桑田真澄2軍監督(56)の言葉から、不調の理由と打開策を探る。

 珍しい光景だった。今月13日、DeNA戦前の打撃練習中。阿部監督がバットを持ち、坂本に語りかけた。軸足のタメや踏み出し方、スイングの軌道に腕の使い方。ケージの後ろ、横と角度を変えて見守り、打ち終わる度に修正箇所を伝える。うなずく坂本。信頼を置く主力には基本的に「静」の姿勢を貫いてきた指揮官が、自ら動いて助言を送った。

 本格的に三塁にコンバートされ、不動の5番として幕を開けたシーズン。セ・リーグ新記録となる通算187回の猛打賞や、史上2人目の通算450二塁打、現役最多の通算安打では歴代13位の落合博満氏(2371本)を抜いた。輝かしく記録を更新していく一方、本人の言葉は「調子はよくない」「ごまかしながらやっている」「内容が悪い」と晴れなかった。

 次第に出場機会も減っていく中で、阿部監督は6月25日のDeNA戦後、監督室に坂本を呼んで再調整を告げた。「体と心を見直す時間に充ててくれ」。指揮官にとっても苦渋の決断だった。「本当は最短で戻ってきてほしい」。偽らざる思いも明かしながら、期間や調整方法など本人に一任。「8、9月にいなきゃ終わる。そのために本人と話し合った結果」と、最終盤の優勝争いを見据えた選択だった。

 「やれることは全部やる」と誓った再調整の期間中は、走り込みを中心に体のキレを出すために必死に動いた。指揮官も「技術じゃない、体が追いついていないだけだな」とうなずいた。同時に2軍戦で打席に立つ姿を見て指摘したのは「感覚のズレ」だ。「僕も内の甘い球しか待っていなかった」とし、得意とする内角球に目付けしながら、外角球にも手が出る姿に修正が必要だと説明した。

 「外の球は見逃し三振でもいいから、自分で引っ張れる球を待つ練習してみたらってね。引っ張れない球は打たない」

 ここまでチームの勝敗を背負い、最前線で戦ってきた。現役時代、同じような道をたどってきた阿部監督が坂本に送る助言は、お前が必要なんだ-というメッセージに他ならない。長くエースの看板を背負った桑田2軍監督は「自信を持って前向きに、楽しく野球をプレーする。それでいいんじゃないかなと思いますね」と、心技体の「心」を整える大切さを伝えた。

 「やっぱり野球を楽しくやってもらいたいですね。どんなことがあっても、終わったことはやり直しができない。未来に向けて、次のプレーにポジティブに入っていく。野球を楽しんでもらいたいという話をしました」

 再調整期間、2軍での姿に「ありがたかった」と感謝する。「楽しくやる雰囲気の中に厳しさもありました。今は時代とともに、後輩に厳しく言う人が少なくなっている。若い選手たちもピリッとしたんじゃないかな」。1、2軍監督がそれぞれの立場、視点から届けた復調への打開策と、心から復調を願う言葉だ。歴史的な混戦が続くセ・リーグ。4年ぶりのV奪回に坂本は欠かせない。(デイリースポーツ・田中政行)

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