【野球】なぜ阪神・岡田監督は6連勝にも激怒したのか 「情けないのう。伝統の一戦にならんよ、はっきり言うて」

 巨人に勝利し及川(左)とタッチする岡田監督=7月31日
 木浪とタッチをかわす岡田監督(左)=7月31日
 1回、適時打を放った木浪を笑顔で迎える岡田監督=7月31日
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 「阪神9-6巨人」(31日、甲子園球場)

 首位・巨人に連勝を飾って今季2度目の6連勝。宿敵に1・5ゲーム差に迫った試合後、阪神・岡田監督は激怒していた。「情けないのう。伝統の一戦にならんよ、はっきり言うて」。悩みの種だった打線が今季初の4試合連続2桁安打とようやく底を脱した手応えを感じ取ったはずだが、なぜ指揮官は憤りを隠さなかったのだろうか。

 岡田監督が問題視したのは、4点リードの七回2死二、三塁。打席に森下を迎えた場面で、巨人の3番手・平内の初球はあわや顔面死球かという危険な球だった。体をのけぞらせて倒れ込み、最悪の事態は回避したが、温厚な性格の森下が珍しくマウンド上の右腕をにらみつけ、視線を外さなかった。

 これだけでは終わらない。2球目。捕手の岸田は続けて内角にミットを構えた。シュート回転で胸元を襲った投球に森下は上体を反らせて左膝を着き、またも鋭い眼光を平内に向けた。2ボールからの3球目。スライダーを腰が引けるような姿勢で見送り、見逃しストライクとなると、平内は初球に続いて何事かをつぶやきながら、不敵な笑みを浮かべていた。このシーンを岡田監督は「伝統の一戦にならんよ」と一刀両断したのだ。

 「情けないのう、巨人もな。情けないと思ったわ、俺は。あの2-0からスライダーでストライク取って、なんか笑うてる姿見たら。情けないねえ。伝統の一戦にならんよ、はっきり言うて。ホンマ」と怒りの感情をむき出しにした。

 真剣勝負。食うか、食われるかの厳しい世界。巨人は4点を追いかける展開。さらにリードを広げられるわけにはいかない。初戦に続いて2桁安打を浴びていた。3戦目もある。巨人ベンチとバッテリーが4試合連続マルチ安打、5試合連続打点と調子を上げていた森下の踏み込みを甘くさせるため、厳しい内角球を投げ込むのは当然。ただ、初球の後に森下を威嚇するような態度と表情を見せ、3球目の後にも森下を嘲笑するような姿を見せたことが、岡田監督は許せなかったのだ。

 決して謝罪を求めているわけではない。長くプロ野球界で『伝統の一戦』としてファンを喜ばせ、ファンを魅了してきた両チームの戦いが、こういった形で“汚された”という印象が少なからずついてしまうことが許容できなかったのだろう。

 森下は4球目の148キロを遊撃適時内野安打として一塁ベースを駆け抜けると、雄たけびを上げた。筒井一塁ベースコーチとのハイタッチも、いつも以上の力で手を合わせた。やられたら、やり返す-。バットで勝利に近づく貴重な1点を生み出したことが尊い。

 7月17日の巨人戦。六回1死一塁。カウント2-2から巨人バッテリーは阪神ベンチの作戦を見破ったかのように外角へ外し、坂本が空振り三振。スタートを切っていた一走の大山も二塁で憤死した。阿部監督は「昨日、岡田さんがね、『走れ走れ言っているのに走らない』って言ってたから。動いてくるならここかなって。自分の勝手な勘で。あそこが勝負の分かれ道というか、境目だったんじゃないかなと思います」と、してやったりの表情を浮かべた。

 今回もおそらく、阿部監督は岡田監督の発言をどこかで見るなり、耳にしているはず。岡田監督は策士だ。3連戦最終戦となる1日、甲子園は100歳の誕生日を迎える。節目の一日を前に指揮官が放った言葉は、戦況に影響を与える大きな意味を持つはずだ。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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