【野球】巨人・戸郷の3戦連続完封の難しさ 守護神投入の選択肢は?ベンチが明かす思惑
シーズンは最終盤に入った。依然として歴史的な混戦が続くセ・リーグ。先週は巨人、阪神との6連戦を戦った広島が首位を死守した。中でも巨人-広島(東京ドーム)の首位攻防3連戦は、互いに譲らぬ熱戦になった中で第3戦は延長十回までもつれた攻防。3戦連続完封目前だった戸郷が、1点リードの九回、小園に同点タイムリーを浴びた。ベンチの思惑とエースの言葉で熱戦をひもとく。
9月の消化試合にはない雰囲気が、東京ドームの強い熱気に変わった。1球、1球で戦況が変わる試合展開。首位攻防という名にたがわぬ熱戦は、22日のカード第3戦で終盤を迎えた。1勝1敗で迎えゲーム差は「1」。戸郷-アドゥワの投手戦で六回、浅野の右前適時打で巨人が先制した。
1-0のまま迎えた九回だ。戸郷がベンチからゆっくりとマウンドに向かった。18年の菅野以来、6年ぶりの3戦連続完封を後押しするように、本拠地スタンドは大歓声。8日の広島戦で118球、14日の阪神戦で126球を投げていたエースも、続投に「迷いはなかったです」と振り返る。
この時点で105球。散発の3安打で、二塁すら踏ませぬ内容だった。阿部監督も「あれで代えるのもどうかと。球数もまだ全然、大丈夫そうだった」と説明。ただ、結果だけが裏目に出た。先頭・野間の左前打から矢野の犠打で、初めて二塁に走者を置いた。続く小園に中前打を浴び、同点。大勢が救援し続くピンチを抑えたが、延長十回にケラーがつかまった。
結果が全ての勝負の世界。名将・野村克也氏は「負けに不思議の負けなし」と言ったが、賛否を含め多様な声が聞こえてくる。この試合で言えばまず九回は続投か、継投か。巨人には絶対的な守護神がいる。直近は9戦連続で安打すら打たれていない無双状態。石橋をたたいて渡るなら、継投も選択肢としてあった。
当然、ベンチも戦況を見極めていた。杉内投手チーフコーチは「ブルペンで準備はしていました」と説明。直前で打順が回れば代打もあったが8番で攻撃が終わった。「難しい判断でした」と、同コーチも「うーん」とうなった。「いろんな考えはある。大勢で良かったという人もいれば、戸郷という考えもある」とし、「ベンチとしては戸郷に懸けた」と続けた。
今季チームとして3連投は5月28~30日、ソフトバンク戦に登板した高梨1人。大勢は21日の第2戦に登板している。まだ週の前半。戸郷の状態、戦況、相手打者の反応…阿部監督が総合的に判断した続投で、エースも「継投の判断でも理解はできましたが、僕の中ではどうしてもいきたい」と言った。少なくともベンチに温度差はなかった。
その上で、戸郷が「あそこだけ悔いは残ります」と唇をかんだのが、2ストライクから小園に投じたフォークの選択。直球2球で簡単に追い込んでから、低めのボール球を拾われた。今季のチーム四球数は、阪神がリーグ最多で、広島はリーグ最少。その中で首位に立つ背景に、バットに当てる技術が高い巧打者がそろう。小園は筆頭と言える。
「いいコースに投げたねって言われても打たれている。そこまで突き詰められないと完投、完封はできないよということですね。強気で攻めることも大事だけど、もう一個、引くことをしないといけなかったですね」
勝負の世界で敗戦に正解はない。ただ、後悔と反省は次に生かすことができるし、味わった悔しさは原動力にもなる。たった1球の残像に苦しみながら「チームとしては苦しい状況になってしまったけど、僕としては新たな発見もできたので、また成長できる試合になった。また、頑張ろうという試合になりました」と前を向いた。直接対決は敵地で6試合。143試合で頂点を決めるリーグ戦には、まだ雪辱のチャンスが残されている。(デイリースポーツ・田中政行)
◆22日の巨人対広島 巨人先発・戸郷が八回を終え3安打、無失点と好投。今季4度目の完封を目指し九回のマウンドに立ったが先頭・野間のヒットと犠打で1死二塁とされ、小園に同点打を許し、降板。試合は延長十回、矢野の決勝打で巨人が敗れた。