【野球】阪神 大山悠輔が珍しく見せたガッツポーズの意味 イメージを覆した感情表現 その胸中は

 7回、左前へ2点タイムリーを放った大山は右拳を突き上げる(撮影・市尻達拡)
 7回、左前へ2点タイムリーを放った大山(撮影・市尻達拡)
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 「広島5-7阪神」(25日、マツダスタジアム)

 一瞬、目を疑った。一塁ベースを周り、両手を2度パチンと合わせ、三塁ベンチに向かって右手を突き上げた阪神・大山が、続けざまにガッツポーズを作り、筒井一塁コーチとグータッチを交わした。わずか1度、たった1度の出来事だったが、あの大山がガッツポーズを見せた。

 3点リードの七回2死満塁。左腕・黒原からリードを5点に広げる2点左前適時打を放った場面だ。

 「何があるか分からない相手ですし、1点でも多くというところで、チーム全員のテーマでやってるので」

 初回に2点を失い、森下の逆転3ランが飛び出した三回2死二塁でも、5連打のラストを飾る左前適時打を放つなど、2安打3打点の活躍で得点圏打率をリーグトップの・347とした。

 時計の針を巻き戻せば、カード初戦を制して迎えた24日の第2戦。1点ビハインドの七回無死一、二塁の絶好機で木浪がスリーバントを失敗し、そのまま敗れた。大山の左前打に続いて、前川が死球。相手にプレゼントされたチャンスでのミス。1点差で負けようが、10点差で負けようが1敗に変わりはないのだが、広島を4ゲーム差で追いかける立場としては、悪い負け方だった。

 残り29試合、首位・広島と5ゲーム差で迎えた広島3連戦。理想は3連勝。最低でもカード勝ち越しが求められた中、2戦目を嫌な形で落としただけに、終盤でリードを広げ、勝利に近づく一打に感情が揺さぶられたのだろうか。寡黙なイメージを覆した感情表現だった。

 主軸でありながら全力疾走を怠らず、プレー、お立ち台でのマイクパフォーマンスを含めて決して派手さはないものの、常に勝利のために全力を傾ける印象がある。それでいて、本塁打を放った際に大きなガッツポーズを見せることもなく、黙々とベースを一周する。そんなイメージが大山にはあるから、驚いた。

 18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に輝いた昨季、全試合で4番を張り続けた。だが、今季は不振に苦しむ期間が長く、岡田監督と話し合った末、6月5日に2軍降格の道を選んだ。順風満帆ではなかった。思い通りの結果を残せずに4番を外され、チームも白星を積み上げられなかった事実を『4番』は重く受け止めた。

 七回には先頭・矢野の打球を捕球できず、石井の足を引っ張った。3失点につながったミスを「先頭バッターをエラーで出してしまって、こういう展開になってしまったので、そこは本当に申し訳ない。助けてくれたピッチャー陣をはじめ、チームにすごく感謝してます」と語った。失敗を素直に詫び、サポートやカバーしてくれたナインらに対してストレートに感謝の言葉を表せる。こんな姿勢がずっとあるから、大山は慕われ、愛されるのだろう。

 7月12日の中日戦で4番を務めたのを最後に、翌13日の同戦での6番を除き、5番としての出場が続いている。ただ、今の大山に打順は関係ない。「勝つことが一番。でも、勝つことはそんなに簡単じゃないと改めて感じてます」と引き締まった表情で言葉を紡いだ。

 逆転優勝、悲願のリーグ連覇に望みをつないだ大きな1勝。岡田監督は「そらもう勝ち負けやから。大きいよ」と目尻を下げた。大山のガッツポーズに三塁側ベンチ、スタンド、そしてSNSも沸いた。寡黙な『元4番』が繰り出したガッツポーズ。見えない力となって、突き進む原動力になるかもしれない。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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