【スポーツ】比嘉もえの強さの秘密 アーティスティックスイミング日本代表 幼少期指導の田辺紗羅さんが明かす

 アーティスティックスイミング(AS)日本代表の比嘉もえ(16)=井村ク=は、チーム最年少としてパリ五輪で2種目に出場し、チーム5位、デュエット8位と奮闘した。父は元阪神・鳥谷氏と早大時代の同期で、広島でプレーした元プロ野球選手の寿光さん。幼少期を指導した田辺紗羅さん(27)が、比嘉の強さの秘密を語った。

 大学生として現役だった田辺さんが、比嘉と初めて出会ったのは競技を始めて間もない小学3年時。シニアとジュニアで一緒に練習する機会は多くなかったが、遠目から姿を見て「あの子、足がめちゃくちゃ長い」と当時からスタイルの良さには驚いていた。

 その後、比嘉の身長は学年が上がるにつれて伸び、中学で170センチに到達。「完璧にASの子だ」(田辺さん)。幼少期に習っていたバレエで培った柔軟性と、父・寿光さんから譲り受けた長い手足を生かした力強い演技は、すでにジュニアのレベルを超えていた。

 現役を引退した田辺さんは、片山満津芳コーチを支えるサブコーチとして、中学1年の比嘉のソロを担当するようになった。指導する中で衝撃を受けたのは、人並み外れた吸収力の速さ。「1回言ったことはすぐにできちゃう。他の子に比べると上達が早かった。あの子は天才」。田辺さんがプールサイドから身ぶり手ぶりで演技の手本を見せると、比嘉はすぐに水の中で再現した。1度でできなければ「もう一回やってもいいですか」と、直談判して追加で練習。それでもできなければ、家で演技の映像を確認し、次の日には修正してきた。

 「同じ注意が少ないから、次のポイントの注意が言える」(田辺さん)

 比嘉に演技の細かい変更を提案したときに「いや…ちょっとしっくりきません」と拒否する頑固な部分もあったが、譲れない要素があることは表現力や独創性が問われるAS向き。努力もできる天才は、指導をすればするほどスポンジのように技術を吸収し、成長していった。中学2年で世界ジュニア選手権のソロで優勝を果たすと、歴代最年少の14歳でA代表入り。23年世界選手権(福岡)のデュエットテクニカルルーティンで22年ぶりの金メダルを獲得し、パリ五輪ではチームとデュエットの2種目で奮闘した。

 高校に進学した現在は、数々の五輪メダリストを輩出してきた名伯楽・井村雅代さんが指導するクラブに移籍し、努力を積み重ねている。「本当に広島の誇りです。ずっと応援します」と田辺さん。16年リオデジャネイロ五輪以来のメダル奪還がかかる4年後のロサンゼルス五輪。20歳になった比嘉は、チームの中心選手として戦っているに違いない。(デイリースポーツ・谷凌弥)

 ◇ 比嘉もえ(ひが・もえ)2007年9月15日、広島市出身。3歳からバレエを習い、市立天満小3年から競技を始める。小学6年の全国大会でソロ、デュエット、チームで3冠を達成。市立観音中から、大阪・四天王寺高に進学。21年に出場した選考会では、史上最年少の日本代表に選出された。世界選手権では22年大会で、3つのメダルを獲得。23年大会ではデュエットテクニカルルーティン(TR)で金メダルを獲得した。パリ五輪代表。父は元プロ野球選手の寿光さん。井村ク所属。172センチ。

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