【野球】今オフで3回目を迎える現役ドラフトの現在地とは 球団事情か?クオリティーに“差”
出場機会に恵まれない選手の救済を目的として実施されている「現役ドラフト」が今年で3回目を迎える。22年の初開催でソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎投手(29)ら成功例もある中、「現役ドラフト」の“現在地”に迫った。
出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化させ、新たな活躍の場を与えるために開催されている「現役ドラフト」。22年12月に初めて実施された制度だが、初回は特に成功例が多かった。
ソフトバンクから阪神に移籍した大竹は昨年の日本一に貢献し、今季もローテの一角を担う。DeNAから中日に移籍した細川は2年連続20本塁打以上をマークするなど中軸に君臨する。昨年12月開催の第2回でも、ソフトバンクから日本ハムに移籍した水谷らがブレークした。
「現役ドラフト」の実現を待望してきたのは日本プロ野球選手会だ。1回目の開催から2シーズンが経過しようとしており、現状をどう見ているのか。
選手会の森忠仁事務局長は「移籍して結果を残した選手もいますし、全選手がキャンプでチャンスをもらっている。選手に聞いても、そう言っています。成果が出ていますし、うまくいっている」と評価する。
球界関係者も「選手にとっては流動性がある。改善する必要もあるかもしれませんが、指名された12人がチャンスを与えられており、役目を果たしている」と感想を口にする。
課題がないわけではない。森事務局長は「球団によってリストアップする選手の差がある」と指摘する。現役ドラフト実施前に保留選手名簿に記載された選手から12球団が任意で2人以上を選択する。チーム編成など、各球団にもそれぞれの事情はあるだろうが、事前にリストアップした指名対象選手にクオリティーの“差”があるのでは、という考え方だ。
現状の所属球団では競争が激しい、ポジションが空いていない、などの理由で苦しんでいるが、他球団に移籍すれば“大化け”の可能性を秘める-。そうした選手が多くリストアップされれば、救済の実現や移籍の活性化につながる。森事務局長は「成立しないこともありますし、各球団の事情もありますので」と理解を示しつつ、「引き続きリストアップの件は要望していきたい」と先を見据える。
過去2度の開催では、指名は1巡目で終わっており、成立しないなどの各球団諸事情もあるだろうが、2巡目も実現すれば選手にとっては希望が広がる。森事務局長は声を上げる。「形はどうあれ、選手に多くのチャンスが与えられ、環境を変えることが大事。毎年(制度の)検証をした方がいい」。不遇から抜け出した選手がサクセスストーリーを歩む姿に、ファンが共感を得るケースもあるだろう。今年で3回目。選手、12球団の双方にとってプラスとなり、公平性の高い制度が理想的だと感じている。(デイリースポーツ・伊藤玄門)