【野球】阪神・岡田監督の遺産と誤算 球団史上初のリーグ連覇を逃しCSも敗退 今季限りで退任

 メンバー表交換を終え笑顔の岡田監督。連敗を喫しCS敗退が決まり最後の試合となった(撮影・北村雅宏)
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 「JERA CSセ・ファーストS・第2戦、阪神3-10DeNA」(13日、甲子園球場)

 2023年3月31日、京セラドームで三浦監督率いるDeNAとの開幕戦に勝利して18年ぶりのリーグ優勝へと駆け上がった岡田阪神が、4万2646人の大観衆で埋まった本拠地・甲子園で、岡田政権のCSワースト記録となる10失点で連敗を喫し、阿部巨人に挑戦することなく、日本一連覇への夢がついえた。

 8点を追った九回、代打・原口が左越えにソロを放ったが、2死一塁から森下が二ゴロに倒れると、岡田監督は顔色を変えることなくグラウンドに背を向け、ベンチ裏へと姿を消した。連敗で突きつけられたまさかの終戦。指揮官は「え?ひっどいなあ。最後の最後に」と大敗に苦笑いを浮かべ、心残りについては「全然、何もないよ。何でよ。日本一にまでなったのに。順番間違うただけや。1年目に成し遂げたから、おかしくなってもうた。それだけのことや。言うてるやん、(去年が)出来過ぎやって」と振り返った。

 就任初年度に18年ぶりのリーグ優勝と38年ぶりの日本一を成し遂げた。今季はリーグ2位ながら、契約期間の2年を持って、タテジマのユニホームに別れを告げる。

 阪神OBの中田良弘氏は「スローイングに難のあった中野のショートから二塁へのコンバートは見事だった。これによって中野とともに木浪も生きた。大山を一塁、佐藤輝も三塁に固定したことも大きい。佐藤輝に関してはエラー数のことを言われることも多かったけど、主要ポジションを固定メンバーで戦えるようになったのは、間違いなく岡田監督の功績」とたたえる。

 続けて「外国人野手に頼らないチーム作りもできた。外野で言えば近本、森下、前川に井上。ノイジーやミエセスの成績がいまひとつということもあったけど、昔で言う助っ人頼みの戦力構成を組み立てなかった点も大きい」と、外国人野手抜きでも勝てるだけのチームを整えたポイントも評価した。

 一方、誤算のひとつを挙げるならば、昨年は全143試合で4番を張った大山が2軍落ちし、その間にとてもふさわしいとは思えない近本を当て、その代役までもが調子を落としてしまった点。「やっぱり柱が全試合で4番にいるってことは、仮にチーム状態が悪くなったとしても、ある種の落ち着きを与えるからね。その柱が2軍に落ちたことでチームがグラグラした。来年を考えるならば、一番の適任者である大山が去年と同様、全試合で4番に座ることが大事だと思う」と語った。 昨年は岡田監督が球団フロントに査定ポイントの見直しを要望して承諾を得て、リーグ最多の494四球を選んだことが同最多の555得点につながる大きな要因となった。今年もリーグ最多の441四球を選んだが、485得点は同3位。決して最初から四球狙いという姿勢ではなかったと思うが、それでも昨年からの修正を経て、積極的にストライクを先行させてきた相手投手に対して受けに回ることが多かったように映った。

 相手投手の変化を逆手に取って得点に結びつけることを岡田監督は望んだはずだが、「キャンプのミーティングから言うてる。全っ然、打てへんな。ファーストストライクをな。中野なんか。今でも打たん。勘違い、1年間やで。信じられん。相手がストライク入らへんと思ってるのかなあ。ホンマ分からん。そんなフォアボールなんて選べへんで」と、最後まで後手に回った対応力の貧しさを嘆いた。

 岡田監督は強者への礎を築いた。中田氏は「この2年間を通して、こうやれば勝てる、逆にこうなると苦しくなる、といったものを選手は身を持って分かったと思う。だから来年の監督を誰がやったとしても、その思いは生き続けるはず」とし、来季の覇権奪回については「今年はどっちつかずだった正捕手を誰にするのか。梅野なのか、坂本なのか。併用が決して悪いとは言わない。投手との相性もあるだろうけど、やっぱりどちらかが90試合ぐらいはスタメンマスクをかぶらないとチームは強くならない」と結んだ。

 岡田監督が退任したからといって、投手力を前面に押し出したこれまでの戦い方が激変することはないように思う。良い点は引き継ぎ、課題には改良を加える。そうやって強い集団、勝てるチームを作っていく。笛を吹くのは首脳陣だが、ベンチのタクトで拾える勝利はそれほど多くはない。やはり肝心なのは、グラウンドで躍る選手たち。今年味わった悔しさを忘れてはならない。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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