【野球】大社旋風の主役 エース馬庭がプロ志望届を出さなかった理由

 今夏の全国高校野球選手権大会で島根県代表の大社が93年ぶりに8強入りを果たして聖地に旋風を巻き起こした。エースの馬庭優太投手(3年)は一躍全国区に名をとどろかせたがプロ志望届は提出せず。その理由に迫った。

  ◇  ◇

 最後の夏を終え、大社・馬庭は地元のヒーローになっていた。甲子園から故郷の島根に帰ると街行く人に声をかけられ、感謝の言葉を伝えられた。周囲の自分の見る目が明らかに変わっていた。

 「自分の人生が全部変わった。周りから話しかけてもらってすごいうれしかったです」。初戦でセンバツ準Vの報徳学園を撃破。大会ナンバーワン右腕と称された今朝丸に投げ勝った。3回戦では延長11回タイブレークを一人で投げ抜き、自身でサヨナラ打も放って早実に勝利。地元集団で起こした快進撃の中心に立ち、輝きを放った。

 2018年に金足農旋風で脚光を浴びて日本ハムにドラフト1位で入団した吉田輝星(現オリックス)の当時の姿とも重なった馬庭の活躍。見える世界も一変し、プロ入りに挑戦してもおかしくない境遇であったはずだが志望届を提出せずに大学進学を選択した。迷いはなかった。

 「自分を上に見るのは嫌なので。プロに入ったとしても自分のレベルじゃ通用しない。自分を磨くために大学を選びました」。聖地で強豪校の打者を抑えて自信はついた。自分の想像をはるかに超えた成長の実感も確かにあった。それでも、「周りに支えてもらってああいうピッチングをできるのが自分。実力ではない。足元を見て選んだ結果が大学でした」。周囲の反響に思い上がることはなかった。

 150キロを超える直球も伝家の宝刀と呼べるような変化球があるわけでもない。長所を挙げるならば制球力。「スピードよりもチームが勝てば自分は良いと思っているので。そういう意味で制球力で勝負できるピッチャーになりたいなと思いました」。チームの命運を背負って腕を振り、見いだした武器だった。

 目指すは同じ左腕のソフトバンク・和田のようなスピードがなくても打たれない直球。球速への憧れはとっくに捨てた。技巧派左腕として球道を歩む。「絶対最後はプロでプレーしたい。もういちど甲子園でプレーしたいなという気持ちもあります」。これからの伸び代は馬庭自身が一番感じているはず。4年後に胸を張ってプロ志望届を出すために、次のステージで研さんを積む。(デイリースポーツ・北村孝紀)

 ◆馬庭 優太(まにわ・ゆうた)2006年5月9日生まれ、18歳。176センチ、81キロ。島根県出雲市出身。左投げ左打ち。小学1年から高松スポーツ少年団で野球を始め、出雲北陵中時代は軟式野球部に所属。大社では2年夏からベンチ入り。50メートル走6秒9、遠投90メートル。

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