【サッカー】なぜ?川崎・鬼木監督が今季限りで退任 タイトル7度の名将が退いた理由とは 岐路に立つかつての王者

 ACLEの上海申花戦への出発前に開かれた壮行会でサポーターへあいさつするJ1川崎の鬼木監督
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 J1川崎の鬼木達監督(50)の今季限りでの退任が発表された。8年間で2度の連覇を含むJ1リーグ優勝4回など、7度のタイトル獲得にチームを導き黄金期を作った。今季はリーグ戦で低迷し2年ぶりの無冠。名将が退くに至った理由は何か。かつての王者が立たされた岐路について考えた。

 一つの時代の終焉(しゅうえん)を象徴した試合だ。13日のルヴァン杯準決勝第2戦の新潟戦(U等々力)。第1戦の3点ビハインドをはね返すべく試合開始から攻撃的に出た川崎。だが、結果は0-2で敗退し、2年ぶりの無冠が決定した。

 衝撃的なのは敗れたことではない。得点を取りにいって奪えずに完敗を喫したという現実。勝っても負けても面白いサッカーを提供してきた“川崎らしさ”が全く出せなかったということだ。

 16日には鬼木監督の今季限りでの退任が発表された。今季のリーグ戦は現時点で10位。鬼木監督は「今年は成績も出ていない。責任を取れるのは自分しかいない」と、退任への思いを語った。

 結果責任での監督交代は自然な流れ。ただ、竹内弘明強化本部長の「フロンターレが次にどうするかを考える中、鬼木監督ともクラブの方から『未来』へ向けて進みたいと話をさせてもらった」という言葉に、理由はそれだけではないと感じた。

 川崎は黄金期を迎える一方で、この4年間に三笘薫、守田英正、田中碧、谷口彰悟、旗手怜央らが海外リーグへ旅立ち、急激な新陳代謝が求められるサッカー界の変化への対応にも追われた。もちろん、最近2年間の不振の理由には各クラブの対策、強度に特化したサッカーのトレンドの変化もある。だが、選手流出の影響は最も大きかった。

 『若手育成』がチームの最重要課題となり、鬼木監督も強く意識してきたが、その上で「基準は変えないですけどね」とも話している。競争の中で技術や質の“基準”を満たした選手が試合に出る。徹底したこだわりがチーム力を高めてきたが、時代の変化は指揮官が信念を貫くことを難しくした印象を受けた。

 現在の川崎では若手が抜てきされる機会は少ない。それは“基準”に達していないからだが、選手の入れ替えの激しさに反してチームの新陳代謝は遅れを見せた。この先も加速する選手流出を見据えれば、将来はクラブ理念が浸透した下部組織出身の選手でベースを作ることも方法の1つ。それには、時に成長を促すための起用も必要になる。

 「選手が抜けるサイクルが早くなり、育成の大事さがより重要になる」と竹内強化本部長。描く『未来』が5年、10年先を指すとすれば、次の形へと進むタイミングは、今この時しかない。それが監督交代という判断なのだろう。そして、今後はフロントが強い信念を示さなければいけない。

 新監督はアカデミーなどのクラブが大事にする要素への理解度も条件とされるが、名将・鬼木達の後任は誰であっても難しいミッションだ。結果が出なければ、批判の声も上がるだろう。そこでぶれずに進めるかが鍵となる。風間前監督が基礎を築き、鬼木監督が大きく開花させた川崎のサッカー。さらにファンを楽しませる『未来』へつながることを願いたい。(デイリースポーツ・中田康博)

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