【野球】歴史的大失速の広島が取り組む打撃特化型キャンプの現状とは? 新井監督「近道も、特効薬もない。苦しまないと」
広島は4日から宮崎県日南市で秋季キャンプをスタートさせた。今季は9月4日まで首位に立ちながら、そこから4度の4連敗を喫するなど急降下。歴史的な大失速で優勝を逃して4位に沈んだ。課題は攻撃力でチーム打率・238、52本塁打からの底上げは急務。それを踏まえて取り組む、打撃特化型の今キャンプの現状に迫った。
天福球場のグラウンドに、若鯉たちの声が響き渡る。表情をゆがめ、叫びながらバットを振る選手ばかり。かねて「量は増えるよ」という新井監督の言葉通り、秋季キャンプは第1クールからハードさを極めている。
まずは午前中。例年は午前9時ごろから早出組がグラウンドで特守を行っていた。この時間の打撃練習はブルペン奥の2カ所のみだったが、今年からはグラウンドに3カ所の打撃ケージを置き、フリー打撃のローテーションを約1時間行う。
同時間は室内練習場とブルペン奥でも別の組がティー打撃。新井監督は二つの場所を行き来しながら、精力的に助言を送る。1回目のフリー打撃終了後、野手陣は守備練習と昼食を挟んで2度目のフリー打撃。初日はその後、9カ所でのロングティーと5カ所の連続ティーの2組に分かれ徹底的にバットを振った。午後1時から4時間ノンストップで打撃練習。選手たちはヘロヘロになりながら宿舎へ戻った。
打撃特化型キャンプの狙いについて指揮官は「今からシーズンが始まるわけじゃないから、ギリギリまで追い込める。春と秋の位置付けは違うから量は増える。体で覚えていく感じ」と説明。午後から紅白戦を行う日は2回目の打撃ローテの時間を午前11時前に早めて、ロングティーも必ず敢行する。
第1クールでは5日に侍ジャパンとの練習試合があり、6、7日は紅白戦と秋季キャンプでは異例の3連戦。練習の中に実戦を組み込むのは、各自の取り組みの達成度を把握するため。「課題として取り組んでいることが、どこまでできているか。それは実戦じゃないと分からない。その確認」。試合で“現在地”を知り、猛練習で習熟度を高めるサイクルで若手を鍛え抜いている。
チームは今季終盤まで優勝争いを演じたが、9月に5勝20敗と大きく負け越し、CS進出も逃した。浮き彫りになったのは貧打の深刻さ。チーム打率はリーグワーストの・238、52本塁打は12球団最少だった。投手陣は8月まで防御率2・25(リーグトップ)を誇っていたが、9月に入ると4・49まで上昇した。
指揮官は「投手陣はそこ(8月まで)で力を出し尽くした感じかな。得点が少なく、ロースコアの展開を逃げ切るゲームが続いてきたから」と分析。投手陣の負担を減らし勝負どころでラストスパートに入る態勢を整えるためにも、得点力向上は欠かせない。
「近道も、特効薬もない。やっぱり苦しまないといけないから。『コレだ』と思ったことを継続していくことが大切。すぐやめないこと」と新井監督。たゆまぬ努力をチーム全体で積み上げて、実り多き秋にしていく。(デイリースポーツ・向亮祐)