【スポーツ】なぜ?卓球女子の新星・大藤沙月が劇的進化 世界ランキング8位浮上 ロス五輪目指す20歳の急成長のきっかけ
卓球女子の大藤(おおどう)沙月(20)=ミキハウス=が、国際卓球連盟が12日に発表した世界ランキングで日本人3番手の8位に入るなど、めきめきと実力を伸ばしている。20日から北九州市で開催される世界ランキング上位選手による「WTTファイナル」(北九州市立総合体育館)はシングルス、横井咲桜(20)=ミキハウス=と組んだダブルスに出場。2028年ロサンゼルス五輪を目指す新星の進化に迫った。
昨年末に「1年間でランキング50位以内」を目標にしていたと思えぬ成長曲線を描く。大藤はパリ五輪代表組の早田ひな(5位)、張本美和(6位)に続く日本人3番手。「1年前は勝てなくて苦しかったので、こんな明るい世界が広がっているんだと思うと楽しい」と笑顔で話した。
4月初旬の世界ランクは125位。7月2日には前週の55位から30位に浮上し、早々と目標を達成した。10月末のWTTチャンピオンズ・モンペリエ大会で平野美宇、伊藤美誠を撃破すると、決勝では張本を4-2で破って優勝した。
2020、21年の全日本選手権ジュニアの部シングルスを連覇するなど10代から実力者だったが、つわものぞろいの日本女子で目立つことは少なかった。昨年10月からTリーグ・日本ペイントで指導を受ける坂本竜介コーチ(39)との出会いが転機だったという。「完璧主義で周りがよく見えなかった」とネガティブな思考が多かったものの、同コーチに「失敗しても、いい勉強と思え」とアドバイスされるうちに「悪いことがあってもプラスに変えられる。視野が広がった」と発想を変えることに成功した。
技術面もメスを入れた。パリ五輪選考対象だった1月の全日本選手権シングルス6回戦で平野に敗れた後、用具もスタイルも変更。「攻める卓球にしようと。ラバーもラケットも、ボールをコントロールしやすいものから振らないと(相手コートに)入らないものに変えた」。約2カ月、慣れない用具で力を加えて振り切る練習を繰り返した。ボールをコントロールできず、もどかしい日々に耐え、フットワークをつけるため下半身トレーニングも重視した。
変化は顕著に現れた。4月のWTTフィーダー・クロアチア大会と同ドイツ大会で2週連続優勝し、その後も着実に成績を残した。今では「思い切りの良さと、女子ではあまりいないバックハンドで強打を打てる」とパワーを武器にする。
WTTファイナルのシングルスは世界ランク1位の孫穎莎(中国)や早田、張本らがそろう。「孫穎莎選手と対戦したい。中国勢に対策されていると思うのでその上をいきたい」と意欲を燃やす。現在の目標は世界ランク5位。「そこを目指すと五輪も見えてくる。結果だけ求め過ぎると強くなれないので、強くなることだけを考えて練習している」。攻める卓球を身につけた20歳の伸びしろに注目だ。(デイリースポーツ・中野裕美子)
◆大藤沙月(おおどう・さつき)2004年5月16日、福井県大野市出身。3歳で競技を始め、四天王寺中・高を経て、現在はミキハウス所属。20、21年全日本選手権ジュニアの部で2連覇。今年10月のアジア選手権では、横井と組んだダブルスで日本勢初の優勝を果たし、同月のWTTチャンピオンズ・モンペリエ大会もシングルスで優勝。右シェーク攻撃型。152センチ。