【野球】物議醸す発言や猛批判 それでも新聞記者に丁寧に対応 渡辺恒雄氏が巨人担当記者にホテルで語り続けた真意とは

 強烈なオーラ、威圧感があった。この日、死去したことが明らかになった巨人元オーナーの渡辺恒雄氏だ。

 2004年球界再編問題の際は当時の日本プロ野球選手会・古田敦也会長に対して「たかが選手が」発言で物議を醸したこともあった。当時、巨人に在籍し、不振を極めた清原和博について「邪魔をしなければいい」と激しい口調でクギを刺したこともあった。歯に衣(きぬ)着せぬ物言いは時に、センセーショナルに報じられ、独裁的なイメージが常につきまとった。

 ただし、新聞記者に対しては丁寧に対応したイメージしかない。当時の巨人担当記者の“夜回り”といえば、渡辺恒雄氏が立ち寄って食事をする都内の高級ホテル巡りだった。決まったホテルの駐車場にいつもの黒塗りのハイヤーが駐車されていると、記者全員に緊張が走る。いつも夕方から夜の9時や10時までホテルのロビーで待機した。食事後、姿を現す渡辺恒雄氏は“君らみたいに暇じゃない”などと皮肉を言いつつ、立ち止まり、1時間以上“ぶらさがり”取材に応じることもあった。自身ももともと政治部の記者で、張り込む取材もし、苦労を重ねてきたからだといつも感じていた。

 あれは2011年、7月21日のことだ。私と後輩の巨人担当記者2人で都内のホテルで食事をした渡辺恒雄氏をロビーで待ち、単独取材をした。そのホテルには読売新聞広報担当者もいたから数人の記者による“囲み”取材の様そうだった。取材のテーマは11年シーズンが3年契約の最終年となる当時の原辰徳監督の去就。渡辺恒雄氏は、原監督の手腕を絶賛し「菅直人(首相)よりはるかにマシだ」とジョークとも本音とも取れる“リップサービス”を交えて、指揮官の続投を示唆していた。

 時に厳しい発言や鋭い指摘で賛否両論はあったことだろう。ただし新聞記者としての情熱を持っていたと思うし、何よりも、特大の“ニュース”をスポーツマスコミに提供し続けた超大物であることは間違いない。

 心よりお悔やみ申し上げます。(デイリースポーツ元巨人担当・伊藤玄門)

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