【野球】なぜソフトバンク移籍を決断した上沢直之に批判が集まるのか 同じ道を歩んだ有原航平との違い

 昨オフにポスティングシステムを利用して米大リーグ・レイズとマイナー契約を交わし、その後、レッドソックスに金銭トレードで移籍した元日本ハム・上沢直之投手のソフトバンク入団が決定した中、右腕への批判が渦巻いている。なぜなのだろうか。

 上沢は昨オフ、レイズと契約金2万5000ドル、年俸22万5000ドルのマイナー契約を交わした。金額が抑えられた契約形態だったため、日本ハムへの譲渡金は当時のレートで約95万円と安く、上沢が海を渡る見返りとしては実質的にマイナスに等しかった。

 メジャーでの登板は中継ぎでわずか2試合。右肘痛も重なった。日本に帰国後は日本ハムの施設を使いながら、来季への歩みを進めていた。次の進路をNPBに求めるという情報が流れてからは、古巣の日本ハムに復帰するのが筋、復帰するだろうという声が大勢を占めていたように思う。

 それは、チームが右腕を必要とする中、譲渡金が少ないことを想定した上でFA権取得前の上沢の希望をくみ取り、快く夢に向かう右腕を送り出した日本ハムの心意気を知っているからだ。

 上沢はわずか1年で夢を諦めることになった理由を詳しくは明かしていない。右肘痛、家族、環境、先発希望など、いろいろな理由は考えられるが、義理を重んじる日本人の発想として、NPBに復帰するならば、獲得に乗り出し、自らの思いをくみ取って後押ししてくれた日本ハムに復帰するのが進むべき道だとする声に納得はできる。

 ただ、現行のルールでは上沢の選択はなんら違反には当たらず、ポスティングでメジャーに渡った選手がNPBに復帰する場合、旧所属球団と契約しなければならないといった条文も存在しない。

 上沢と同じく、日本ハムからポスティングシステムを利用して海を渡ったのが有原航平だ。20年オフにレンジャーズと2年契約を結び、成績は3勝7敗、防御率7・57と振るわなかったが、総額620万ドルのメジャー契約を結んだことで、日本ハムには約1億3000万円の譲渡金が支払われた。23年1月にソフトバンク入団が発表された際、今回の上沢に寄せられたような批判の声が少なかったのは、日本ハムへの譲渡金が有原を失った対価にある程度見合ったものであり、メジャーへの挑戦が1年ではなく、2年だったという点もあるだろう。

 プロ野球評論家の中田良弘氏は厳しい声を向ける。「前提として、どんな理由があったのかは知らないけど、夢への思いはたった1年で諦めるようなものだったのかな。きつい言い方をすれば、わずか1年でしっぽを巻いて帰ってきたようにも見える。そこに加えて、ソフトバンクを選んだこと。プロ野球選手は個人事業主。それは俺も経験してるから分かる。ただね、ここは日本。アメリカじゃない。アメリカはビジネスライクだけど、日本はやっぱり義理や人情を重んじる国。ルールを破ったわけではないけど、お世話になった日本ハムも獲得に手を挙げる中でソフトバンクを選んだという流れには、それ相応の批判を浴びるのは仕方ないかなと思うね」との見解を示した。

 上沢の選択に関しては、現役選手、プロ野球OBも各方面で個人の意見を述べている。賛成の声もあれば、反対の色を帯びた意見もある。ただ、ある種の抜け穴的な要素が現状のルールにあるとしても、協約などの規定に抵触しないことも事実。上沢が最初から1年での日本球界復帰を描いていたとは思わない。だからこそ、NPBには上沢が抜け道を利用したとして非難されることのないようなルールの整備を求めたいし、右腕には苦悩の1年を経て再度日本で力を示し、日本ハムにはかつての僚友を打ち砕くといった勝負を楽しみにしたい。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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