【野球】なぜ?3度目の現役ドラフトで如実に現れた12球団のスタンスの差 史上初「2巡目指名」の一方で浮き彫りとなった課題とは
日本野球機構(NPB)は、出場機会に恵まれない選手を救済する「現役ドラフト」を9日に非公開で実施した。今年で3回目の開催となり、史上初めて2巡目指名が成立したことも話題になった。その一方で12球団の“現ドラ”に対するスタンスの差も浮き彫りになってきた。
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3回目の開催となった現役ドラフト。史上初めて成立した「2巡目指名」に制度本来の趣旨である移籍の活性化を実感する一方、今後に向けた課題も浮き彫りになったように思う。
日本プロ野球選手会の森忠仁事務局長が「2巡目がなかなか成立しない」と振り返る通り、過去2回は1巡目で指名が終了していた。今回の2巡目は広島と日本ハムを含めた3球団以上の球団が参加したとされ、最終的に、広島が日本ハムから鈴木健矢投手を獲得する1例だけが成立した。
2選手を獲得した広島からは矢崎拓也投手がヤクルトに移籍。一方で日本ハムは鈴木に加えて田中瑛斗投手が巨人に移籍し、獲得したのはソフトバンクから吉田賢吾捕手の1人のみ。獲得した選手と移籍した選手の数に差も生まれた3回目を終え、現役ドラフトに対する各球団の考え方や編成方針の違いが、はっきりとしてきたように感じる。
森事務局長は「1位(1番目)で引きたい、上位(指名)で選手を取りたい球団は、いい選手を出す」と説明する。
例えば自チーム内で1軍枠を争うことができるような選手や、ポテンシャルが高く、環境を変えれば主力に成長する可能性を秘めた選手は他球団からの獲得希望も多くなる。そんな選手が欲しい場合は優先的に上位で指名できるようにするため、人気が高まりそうな所属選手を複数リストに入れる方法がある。
実際に成功例はいくつも出てきている。
ソフトバンクから阪神に移籍した大竹は2年連続2桁勝利を挙げ、DeNAから中日に加入した細川は2シーズンで47本塁打をマーク。ソフトバンクから日本ハムに移った水谷は今季の交流戦でMVPに輝いた。
その一方で森事務局長は「(現役ドラフトに)期待してない球団は、それほどいい選手を出さないこともある。選手からも『球団によってクオリティーの差がある』という声もある」と指摘する。出血を覚悟してでも積極的に他球団のダイヤの原石を発掘するのか。それとも重きを置かずにこれまで通りのスタンスを貫くのか。3回目を終えて、12球団の受け止め方に如実に「差」が現れてきたと感じている。(デイリースポーツ・伊藤玄門)