【野球】なぜプロ野球選手の海外自主トレは減ってきたのか ハワイ、グアムなどの常夏の島から国内が主戦場になりつつある背景とは
年が明け、日本各地から自主トレ便りが届く中、かつてはハワイ、グアムといった常夏の島でトレーニングを積み、真っ黒に日焼けして2月のキャンプインを迎えるといったプロ野球選手も多かったが、ここ数年はその傾向に変化が見られるようになってきた。なぜなのだろうか。
今オフ、海外で自主トレを積んでいる選手としては、日本ハムの万波がアリゾナで汗を流し、ロッテの唐川、西野、種市は温暖なニュージーランドに拠点を求めた。日本ハムの達や今川、楽天・早川もアメリカに渡るが、こちらは最先端のトレーニング施設を利用する中で、改めて体の仕組みを理解したり、トレーニング理論を学ぶといった目的があるようだ。
かつては阪神時代の新庄がハワイで肩を作り、同じく糸井がグアムで走り込んだ。近鉄はサイパン、中日が米国フロリダ、オーストラリアのゴールドコースト、巨人もグアムでキャンプを張った時代もあった。これはひとえに日本国内の寒さを避け、温暖な地で練習する方がケガを防ぎ、練習効率もアップするという考えもあった。
海外自主トレ隆盛の時代から、多くの選手が足場を国内に移すようになった背景としては、昔と比較して国内でも過ごせるような気候になりつつあることも要因のひとつだろうが、多くのドーム練習場が建設されたことによって、雨や寒さを気にすることなく練習できる環境がどんどん整いつつあることが挙げられる。
現役選手の声を拾えば、「日本国内でケガにつながるような寒さを心配することなく練習できる環境があるのであれば、わざわざ海外に行く必要はないのかなと思う。食事の栄養面を考えても、日本にいた方が自分の体調を整えやすいといった面もありますし」と語り、続けて「今はキャンプが始まる前に、キャンプ地で自主トレできるようになったのもメリットとしては大きいですよね」と説明した。
また別の選手は「海外の暖かいところでやれば体が仕上がったような感覚になりがちで、体が動きやすくはなってるけど、実際のところは体の芯から出来上がっていない場合もある」とした上で、「海外で一度体を作って、そこより寒い日本に帰ってきちゃうと、せっかくできつつあったものが台無しになったり、一歩後退してしまうこともある。それが微妙な感覚のズレを呼んでオーバーワークになったり、ケガにつながったりもするので、そんなんであれば日本で段階を踏んでやっていけばいいのかなって」との考えを述べた。
シーズン143試合の長丁場を乗り切るためのスタミナ、下地作りに励むのが自主トレであり、キャンプ。体を冷やす外気温を気にすることなく納得いくまで練習できる環境と施設が増えていけば、新たな知識を増やしたり、米大リーグなどの最新設備、最新の練習法などを学びたいといった場合を除けば、今後さらに国内自主トレ組が増えていくのではないだろうか。(デイリースポーツ・鈴木健一)