【野球】急転直下で誕生した初代DeNA監督 元GM高田氏が吐露する中畑清氏への感謝と申し訳なさ

 7年間にわたってDeNAのGMを務め、26年ぶりの日本一への道筋をつけた高田繁さん(79)は、初代監督の中畑清氏に特別な感情を抱いている。監督就任が決定的だった工藤公康氏との交渉決裂、急転直下での中畑氏への就任要請-。初代監督に就任し、チームの変革に苦闘した熱き指揮官への思いを吐露した。

  ◇     ◇

 DeNAでのGM時代を語る時、高田さんが何度も口にした固有名詞がある。

 「いまだに中畑には申し訳なかったと思ってる」

 「中畑には感謝してる」

 「中畑は本当によくやってくれた」

 GMと監督という関係で過ごした濃厚な4年間は、高田さんの心に深く刻まれている。

 中畑監督は急転直下で誕生した監督だった。

 プロ野球への参入を決めたDeNAは当初、初代監督として西武、ダイエー(現ソフトバンク)、巨人などで活躍した工藤公康氏に就任を要請。高田さんはGMとして交渉を本格化させていた。だが、大詰めの段階で交渉は暗礁に乗り上げた。

 理由について高田さんが語ることはない。

 「横浜のホテルも抑えてあって、そこで監督の就任発表をするって段階だったけど、最後にそういうことになってね」

 切迫した状況だった当時を静かに振り返った。

 高田さんはGM職を辞めることを球団側に伝えた。だが球団側からの慰留を受け、次なる手を打つべく動いた。

 自転車を飛ばして向かった先は巨人時代の後輩、中畑氏の自宅だった。

 「中畑とはしょっちゅう飯も食ってたし、監督をやりたいというのは分かってた。工藤で話が進んでるけど、もしかしたら壊れる可能性がある。もし、うまくいかなかったら、やってくれるかって言った。あいつ、何て言ったと思う?」

 高田さんは逆に質問を投げかけてきた。

 「あいつはね、『高田さん、監督発表はすぐだし、新聞に(工藤の)名前も出てる。工藤とまず話をして、それで工藤がやってくれるということであれば、工藤に監督をやってもらうのが一番ですよ』って。普通なら、監督をやりたいんだから『分かりました、やりますよ』っていうところでだよ」

 最終的に工藤氏の監督就任は破談となった。2011年12月5日、高田さんは会見で交渉打ち切りを発表した。翌日の新聞には「監督とGMの信頼関係がどうしても築けなかった。交渉を断念しました」とのコメントが掲載された。

 中畑氏の初代監督就任会見が行われたのは、4日後のことだった。

 「『分かりました』って言ってくれてね。中畑には感謝してる」

 「絶好調」が代名詞の熱い指揮官は、4年連続最下位に沈み覇気のなかったチームに化学変化をもたらした。選手たちの士気は上がり、注目度は急激に高まった。来場者の数も増えていった。だが、チーム力の整備は追いつかず、勝利は遠かった。

 4年間のリーグ成績は6位、5位、5位、6位。低迷の責任を取り15年10月、中畑氏はファンに惜しまれながら、志半ばでチームを去った。

 「勝てない、戦力がないチームだったから、中畑の4年間の成績は当然でしょう。誰がやっても大変な苦労をしていた。だから、もう、ほんとに、中畑には申し訳なかった。結果、成績はあれだったけど、泣き言を言わずに、持ち味を出して、ああいうチームに変えてくれた」

 26年ぶりの日本一への足場を固めてくれた後輩への感謝は尽きない。

 昨年12月初旬、南場智子オーナーがXに投稿した写真がファンの間で話題を呼んだ。

 「お祝い」の文字が添えられた写真には、初代オーナーの春田真氏を挟んで高田さん、中畑氏が幸せそうな笑みを浮かべる姿があった。

 「そうそう、あの写真ね。南場さんが呼んでくれてね。中畑と初代オーナーの春田さんとね。いい写真だったね」

 チームの変革を目指した仲間との日本一祝勝会。当時の苦労話で盛り上がったであろう夜を思い出したように、高田さんはほほ笑んだ。

(デイリースポーツ・若林みどり)

 高田 繁(たかだ・しげる)1945年7月24日生まれ、79歳。大阪府出身。右投げ右打ち。外野手、三塁手。浪商高から明大に進み、67年に巨人からドラフト1位で指名され入団。1年目からレギュラーとして活躍し、68年は新人王と日本シリーズMVPに選ばれた。堅守、巧打、俊足でV9に貢献、71年には盗塁王を獲得した。76年には三塁手にコンバートされた。80年に現役を引退し、85年から日本ハムの監督を務めた。退任後は巨人のヘッドコーチなどを歴任、05年に日本ハムのGMに就任。08年からヤクルト監督、11年からはDeNAの初代GMを務めた。

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