【野球】巨人 初日から際立った田中将大と久保コーチの熱量「言って頂いて幸せ」「勝ってほしいんですよ」復活への第一歩 「技術屋」と称する名伯楽のコーチング
「巨人春季キャンプ」(1日、宮崎)
中継画面を見て、昔の記憶がよみがえってきた。巨人に移籍した田中将大投手と久保康生巡回投手コーチのマンツーマン指導。ネットスローは1時間超にも及び、その熱量にくぎ付けになった。
2009年からの阪神担当時代、久保コーチに話を聞く機会が何度もあった。自らを「技術屋」と称し、キャンプでは分厚いクリアファイルも見せてもらった。中に入っていたのは江夏豊ら往年の名投手、さらにロジャー・クレメンス、グレッグ・マダックスらメジャーの一流投手の連続投球写真だった。
現在ほど簡単に映像を見ることができなかった時代。「少しでもね、選手の成長になれば」-。野球の話になれば2時間でも3時間でも続く。本当に野球に、投手に情熱をささげているという言葉がぴったりな指導者。その発想もユニークだったのを覚えている。
整地用のトンボを使い、投球動作の要領で前に突き刺す動作を繰り返させた。踏み込みを強くさせるのが狙いで「昔からやっていた練習法。モノがない時代からね。フォームに力感を出すのが1番。強く踏み込んでそこから回転するため」と意図を説明。その他にも様々な方法で若手の才能、ベテランの再生に尽力した。
そしてこの日、以前と変わらない情熱で田中将に指導する久保コーチの姿があった。キャッチボールの段階から右腕の体を支えながらアドバイスを繰り返した。ネットスローではマウンドの傾斜を逆に使い、上半身と下半身の連動を意識させた。「上に登ろうとすると、自分の軸足を深く下げない。高いところに登ろうとするとしっかり立てるんで。そうすると体重移動がうまくいく。そういう狙いもあります」。以前に教えてもらった「まずしっかり軸足で立つ。そのまま真っすぐ投げる」というフォームの“原理原則”に則した第一歩の指導だ。
その時間は1時間を超えた。満杯だったボールの籠はいつしか空になり、新たに補充されていた。報道陣もブルペンの周辺に集まり、終盤には阿部監督もブルペンに来て視察。静かに見守り「本人も素直に受け入れてやっていた。よくなることを信じて、見届けたい」と力を込める。
田中将は練習終了後、ネットスローが1時間超に及んだことを告げられると、「そんなにやってました!?」と自ら驚きの声をあげた。その上で「本当にこういうふうに言って頂けることが幸せ。今までも(アドバイスを)拒否していたわけではないですけど、ありがたいです」と率直な心境を明かした右腕。楽天では球団初の日本一へ導き、ヤンキースでも活躍。そこから古巣に戻ってきた。輝かしい実績もあり、なかなか助言をくれる指導者もいなかったのかもしれない。
久保コーチは報道陣にこう語ったという。「勝ってほしいんですよ」。さらに「菅野と非常に似ていますね。いい引き出しが増えていくと、なかなか崩れなくなると思います」と語り、「勝ってる時期はすごく(フォームが)正しい。勝てなくなっているのには理由がある。ボールが見やすいだとか、威力を感じないとか。それをもう一回、立て直して」と今後の方針も示した。
昨季、菅野を復活させたことでファンからは“名伯楽”とも称されている久保コーチ。キャンプ初日に垣間見えた2人の時間。思わず見入ってしまうほどの熱量が、復活への原動力となるかもしれない。(デイリースポーツ・重松健三)
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