外は吹雪でも厩舎の中はあったかい
来る2月11日、JRA新規騎手試験の合格発表がある。注目はJRAとしては「16年ぶり7人目の女性騎手誕生成るか」といったところだが、栗東トレセンには早くも彼らの2つ後輩にあたる競馬学校騎手課程第34期生5人が研修に訪れている。
わずか1週間の短期滞在ながら、将来身を置くであろうプロの現場を体感できるとあって、皆表情は明るい。1月19日の火曜日から早速調教にまたがったり、調教師に伴ってあいさつ回りをしたりと、忙しく走り回っていた。
ところが、翌20日はトレセンを大寒波が襲った。調教開始直前から降り始めた横殴りの雪が、あっという間に馬場を白く覆った。本来ならこの日は多くの馬が追い切りをする予定だったが、取りやめが続出。もちろん実習生がまたがる予定だった馬も例に漏れず。現役競走馬の本気が垣間見える瞬間を味わえなかったのは痛恨だろう。
それでも学ぶことは多い。「こんな雪を見るのは生まれて初めて」と明るく答えてくれた実習生の一人・西村淳也君は馬を抑えきれなかったり、怖がって重心を後ろにかけすぎていることなど早速指導を受けている。私が見たときに乗っていたのはトウカイセンスだった。条件馬ながらここ2戦は連続して1番人気に支持されている。
実習生の山田敬士君は、雪かきをしていると、厩舎のスタッフから「それ(雪かき)は俺がやるからおまえは馬に乗れ」と言われていた。その人は私のカメラに気付くと「馬に乗ってるとこ撮ってやってよ」と笑顔を向けてくれた。
ただ技術を教えるだけでなく、あえて未熟者にいい馬に乗せる姿勢。面倒な作業を引き受け、少しでも馬乗りをさせる心遣い。2人はそのことを感じ取れているだろうか。
両名は恵まれていると思う。おそらく他の3人も同じだろう。所属騎手になれるかどうかもわからない、将来が未知数の生徒に心を砕いてくれている厩舎に感謝してほしい。そして「卒業したらウチに来いよ」と言ってもらえるような学生生活を送ってもらいたい。(写真と文=デイリースポーツ・石湯恒介)