帰国前日、松井秀喜への“最後の取材”
【記憶に残る1枚】
巨人からFA宣言し、ニューヨーク・ヤンキースへ移籍した松井秀喜をキャンプから開幕にかけて取材し2カ月。帰国を翌日に控えた2003年4月12日(日本時間13日)、ニューヨークのヤンキースタジアムでタンパベイ・デビルレイズと対戦する松井の“最後”の取材に臨んだ。
この日の松井は七回までの好機にことごとく凡退。スタンドは大きなため息に包まれていた。
同点で迎えた九回、再び松井に満塁の好機が巡ってきた。私にとっては最後の打席。この時、あえて望遠レンズを置いた。打席の背景に広がる日本ではない、アメリカという異国の雰囲気を一緒に切り取ろうと焦点距離の短いレンズを選択。「決めてくれ!」。祈るようにカメラを構えた。
2球目、松井の放った打球は三遊間を抜ける。メジャー移籍後初のサヨナラ安打!
夢を追って海を渡った日本人スラッガーの一打にニューヨークのファンは狂喜乱舞し、スタジアムは歓喜の渦に巻き込まれた。それと対照的に一塁へ向かう松井の表情は“COOL”だった。
ゴジラからGODZILLAへ-メジャー初本塁打となる満塁弾にも立ち会った。何物にも代え難い“土産”を手に帰国した。(1996年入社・金田祐二)