東京五輪金メダリスト・入江聖奈の、有終の美を飾る“魂の左ジャブ”を激写!

全日本ボクシング選手権大会の女子フェザー級決勝の3回、吉沢颯希(左)との打ち合いで、“魂の左ジャブ”をヒットさせる入江聖奈=27日、東京・墨田区総合体育館(撮影・開出牧)
全日本ボクシング選手権大会女子フェザー級決勝で有終の美を飾り、応援に駆けつけた母・マミさん(右)と記念撮影に納まる入江聖奈=27日、東京・墨田区総合体育館(本人提供)
1回終了後に入江聖奈は大好きなカエルのイラストをあしらったスカーフをかけ笑顔を見せる=27日、東京・墨田区総合体育館(撮影・開出牧)
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 “魂の左ジャブ”だった。現役ラストマッチとなった全日本ボクシング選手権大会で有終の美を飾った、東京五輪金メダルの入江聖奈(22)=日体大=だ。

 27日に東京・墨田区総合体育館で開催された同大会の女子フェザー級決勝の第3ラウンド、吉沢颯希に打ち合いを挑み、得意の“左ジャブ”をヒットさせた。スタンドからその瞬間を激写した私は、迷わず速報用に写真を送った。

 最終ラウンドは明らかに違っていた。前日の会見では、自分の距離で戦うことを明かしていた入江。パリ五輪を目指す後輩の吉沢は、過去に対戦相手のあばら骨を折った“実績”があり、そのパンチ力に「怖いです」と漏らすほどだ。1回は宣言通りのアウトボクシング。2回に積極的に前に出て2度のダウンを奪ったが、確認した撮影データに、クリーンヒットの左ジャブを捉えているコマがなかった。

 そして最終ラウンドから壮絶な打ち合いが始まった。ヘッドギアの隙間から髪が乱れ、パンチを受けた顔面が赤く染まってゆく。強烈なボディをくらってダウンするリスクもあっただろうが、あえて打ち合いを挑む姿に、“ボクサー魂”を感じた。繰り出す一発一発に、無言のメッセージを込めたに違いない。最終回の打ち合いがなかったら、“魂の左ジャブ”を激写することはできなかっただろう。

 小学2年生から始めたボクシング。きっかけは母親が読んでいたボクシング漫画の影響だったという。頑固で負けず嫌いな性格で、母親に反対されてもボクシングを諦めなかった。父親の協力を得てボクシングジムに通い、男子と一緒に練習した。得意のパンチは左ジャブ。不器用ながら人一倍の努力で東京五輪出場を勝ち取り、金メダルを獲得するという、まさにマンガのようなストーリーである。

 来春進学する東京農工大大学院で大好きなカエルの研究者を目指すという。ボクシングとは、という質問に「コンプレックスが強かったので、自分の存在を証明できるもの」と答えていたのが印象的だった。赤コーナーの応援席には母・マミさんの姿があった。一時は反対していたが、最終的には一番の理解者となって応援してくれた母親について「感謝しています。就職して初任給をいただいたら恩返しをしたいと思います」と笑顔を輝かせた。

 親からもらった丈夫な体で大輪の花を咲かせ、目の前で有終の美を飾った。心優しい、最強の“孝行娘”だ。ボクシングで鍛えた心と体を、今度はカエルの研究というリングで発揮するに違いない。(デイリースポーツ・開出牧)

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