神戸に世界一のクリスマスツリーを プラントハンター西畠の挑戦
そら植物園株式会社(大阪府池田市、西畠清順CEO)が「めざせ!世界一のクリスマスツリープロジェクト」を4日、発表した。開港150周年を迎えた神戸港に今冬、生木では米ニューヨークのロックフェラーセンターを超える30メートル級のツリーを設営する。
ツリーに使用する木は富山県氷見市で生息している推定樹齢150年のあすなろの木。その生きた巨木を、特殊トレーラーで富山港まで運び、そこから船舶で1000キロ離れた神戸メリケンパークまで運ぶ計画だ。総経費3億円、目標観客動員100万人というこの歴史的プロジェクトについて、仕掛け人で同社CEO、プラントハンターとして知られる西畠氏に聞いた。
-神戸で世界一のクリスマスツリーを設営しようと思ったきっかけは?
「ひょんなことからなんですが、企業に頼まれたのが最初。ただ、その企業との話が立ち消えて、その後、開港150周年を迎える神戸市側と話しているうちに、よし、自分でクリスマスツリーを立てようと決めました。神戸は地元です。阪神・淡路大震災を経験しているんで…初めて死の恐怖を感じました。おばあちゃんの家は全壊しました。それと通っていた高校の目の前に仮設住宅がありましたが、それを3年間見てますからね。大災害から見事に復活した都市・神戸から、日本中に、いや世界中にメッセージを発信したいと思いました」
-それにしても生木を富山から神戸まで運ぶとは大胆な発想ですね
「ずっと探して日本中回りました。北海道から九州まで。なかなか見つからなかったのですが、富山県氷見市から海浜公園をリニューアルしたいというお話がありました。巨木の里として知られるその氷見市で、あすなろの木を見つけたのです。他の木と違って、前に立つとドキッとしました。とんでもなく大きくて、思わずてっぺんまで登って気持ちが高ぶったのを覚えています。山から富山港までの陸路は、新幹線の車両を運ぶ特殊なトレーラーで。神戸港までは船をチャーターして運びます。輸送費だけで数千万円はかかりますね」
-生木にこだわるには理由がある?
「同時期に開催される神戸ルミナリエは鎮魂の意味を込めて開催されています。巨木を立てることも鎮魂を込めたメッセージです。巨木は日本人の原質なんですよね。祭祀の折りに木を立てることを神聖な行為とし、木を立てる場所は神聖な場所です。ところで人が木から受ける恩恵はどのくらいか知っていますか?」
-いえ、知りません
「1人の人間が一生で消費する量はスギの木に換算して100本分くらいです。着たり、食べたり、家具として消費したり…それぐらい木から恩恵を受けています」
-街の中心で行われる光の祭典・神戸ルミナリエから神戸港は歩いて行ける距離だが、派手な電飾はしないそうで
「LEDを使った派手な装飾は考えていません。それだと昼間は電線だらけのツリーになってします。昼間でも美しいツリーがいいな、と。だから反射材を使います。太陽の下でもきらめくように。来場者に七夕の短冊のように願い事やメッセージを書いてもらって。夜はそれを外側からライトで照らす。反射材が風になびく姿を見てもらいたいと思います。あすなろの木は針葉樹、つまり風媒花です。子孫を残すために種を風に乗せるわけですが、風に乗って未来に向かうというメッセージでもありますね。イベント終了後は、皆さんに書いてもらったオーナメント(メッセージ)を埋めて、タイムカプセルにしたいですね。150年後の人に見てもらうとか」
-150年後ですか。そういえば、西畠さんは150年続く花と植木の卸問屋の五代目だそうですね
「そうです。今回は神戸開港150周年の記念事業の関連事業ですが、たまたま150年つながりですね。最初は地域の花屋などに卸していた小さな問屋でした。おかげさまで、私の代になって海外からの輸出入量が10倍に増えました。今では年間250トンほどです。企業や官庁からの依頼で、世界中を飛び回って珍しい木を探しに行きます。ヨーロッパのスペインやイタリアのオリーブの木、アフリカ・セネガルからバオバブの木だとか。会社にいるのは2割、あとの8割は出張です」
(聞き手/デイリースポーツ・佐藤利幸)