解熱剤の安易な乱用は危ない…インフルエンザなどの重症化招くことも
風邪、インフルエンザで苦しんでいる人が近くにいませんか。ひとまず解熱剤に頼るケースもありますよね。しかし、過ぎたるはなんとやらです。兵庫県伊丹市の「たにみつ内科」で地域のホームドクターとして診察を続けている谷光利昭院長は、解熱剤の乱用に注意を促しました。
◇ ◇
そういえば、伊丹の地で開業して10年8カ月になりますが、私は一度も風邪や病気で休んだことはありません。「●●は風邪をひかない!」と言われている通りかもな?と自嘲していましたが、考えてみると医師という仕事が大きく係わっているのかもしれません。
まず、医学の知識が他の職業の人たちよりは豊富にありますので、少し体調に不具合があると、知人に診察してもらい投薬治療をうけます。これが最も大きなポイントかもしれません。あとは、車で通勤しているために細菌、ウィルスに暴露しにくい。院内ではマスクを可及的に着用していますが、患者さんからのウィルス、細菌の暴露はかなりのものになると思います。そういった少量の暴露が身体の中で、細菌やウィルスに体する抗体を作ってくれているのかもしれませんね。
最近は風邪をひいた際、薬局で市販薬を飲み続けて重症化して来院される人をよく診察します。その患者さんの免疫能力が高ければ、それだけで治癒することも多いのですが、そうではない高齢者、乳幼児の患者さんは、くれぐれも気をつけて頂きたいものです。
まだまだ、インフルエンザは流行しています。市販薬を飲み続けて来院され、発熱などの症状はないけれども、身体が異常にしんどい、ひどい頭痛がするなどのインフルエンザの症状を伴って来院される患者さんは多いんです。その際に「熱がないのにインフルの検査をしないといけないの?」と怪訝(けげん)な顔をする患者さんもおられますが、理由を説明して検査をすると、インフルエンザ陽性の結果が出るケースは少なくない。市販薬であれば、問題が大きくなる可能性はまだ低いのですが、医療機関でもらった強い解熱鎮痛薬を自己判断で飲んだために、感染症が重症化してからようやく病院に来られる患者さんが結構おられるんです。
第一次世界大戦中に世界で大流行して、死者数が4000万以上とも言われているスペイン風邪(インフルエンザ)についても、ある種の解熱剤を大量に使用したことが、死者が増加した原因の一つという説があります。苦しくて不安になってくるので、高熱を緩和したいという気持ちはよくわかりますが、安易に解熱剤を乱用することは危険です。くれぐれも、そうなさならないようにお願いしたいのです。
インフルエンザ以外でも、肺炎、溶連菌感染症、尿路感染など重症化すると命に関わる疾患が、この手の薬剤を使用したために隠れて見えなくなることもあるのです。繰り返しにはなりますが、安易に市販薬、手持ちの残薬で経過を見ないで、調子が悪ければ速やかに信頼できる医師と相談することをお勧めします。