【谷光利昭医師】ただの貧血…いえいえ軽視は禁物です!原因の“検索”が肝要
【Q】貧血の症状があり、サプリなどで鉄分を取るようにしていますが、あまり効果がないようです。いい対処法はないでしょうか(30代女性)
【A】まず、本当に貧血かどうかを調べないといけません。単なるふらつき、立ちくらみ、疲れやすいなどの症状から勝手に貧血と思い込んでいる患者さんをよく見ます。血液検査などを受け、はっきり確認しましょう。
次になぜ貧血になったかです。大まかに分類すると4つの原因があります。(1)失血(2)赤血球破壊の亢進(こうしん)(3)赤血球生成の材料の不足(4)赤血球生成過程の障害などです。質問された方は、上記(3)で障害が起きていると予想されているわけです。しかし、なぜ赤血球を生成するための材料が足らないのかを検査しないと、改善は難しいでしょう。血液を生成する物質は鉄分だけではなく、ビタミンB12やたん白などの栄養素も必要になってきますから。それによって対処は違ってきます。
本当は、気づいていなくても失血のためかもしれません。女性なら過多月経、男性であれば痔などが原因であることが多いのですが、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、大腸がんによる消化管からの出血が影響していたという例もあります。そうなれば、早めにしっかりと治療しないと生命にかかわります。
とにかく大切なことは、原因の“検索”です。それが体に重大な危険を及ぼすものでないと分かれば、市販の鉄剤を飲み、経過観察でもいいと思います。もちろん、貧血の程度にもよりますが…。市販のサプリメントの鉄含有量は、我々が患者さんに投与する10分の1から6分の1程度のようです。ただし、牛乳、緑茶、コーヒー、紅茶などと一緒に摂取すると吸収率が低下することがあります。
薬に頼りたくないからといって、鉄分が多く含まれているレバーなどを過剰摂取するとコレステロールが上昇しますし、妊娠3カ月までの妊婦さんが同様の事をするとビタミンAの過剰摂取により、胎児に影響を及ぼすことがあります。このように、貧血と言っても様々な問題が隠れています。くれぐれも軽視しないようにしてください。
◆谷光利昭(たにみつ・としあき)兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。デイリースポーツHPで医療コラム「町医者の独り言」を連載中。