【櫻井直樹医師】悩ましいアトピー性皮膚炎…効果的は治療とは
【Q】以前からアトピー性皮膚炎(AD)があって、皮膚科に行ってもなかなかよくなりません。(30代、男性)
【A】私自身、高校生までADがひどかったので、その苦痛はわかります。ADでよく聞かれるのが、「いつ治りますか?」。これはチャレンジングな質問で、自然治癒することが多いのですが、その時期の予測は困難で、逆に、ADの30%にみられるフィラグリン遺伝子変異のある場合、長期罹患が予想されます。高血圧や糖尿病等の他の慢性疾患と同様、ADの治療は対症療法であって根治療法ではなく、しかし、そのうち自然治癒する可能性がある、それまでは治療継続の必要がある、という点はまず理解しておく必要があります。民間療法・アトピービジネスに手を出さないように注意しましょう。
それではADの治療とは?保湿剤、ステロイド外用剤、タクロリムス外用剤、抗ヒスタミン剤内服が大きな柱です。特に、ステロイド外用剤、タクロリムス外用剤については、医師の中でさえも、科学的な根拠のない誤解(外用剤が全身に吸収されてさまざまな病気を引き起こす等)を抱いている人が多いですが、皮膚科専門医の適切な指導の下で使用すれば、ほとんど副作用の心配なくADを適切にコントロールすることができます。
特に外用剤の外用量が非常に重要で、皮膚科に行ってもよくならない、という方の多くが、外用量が圧倒的に足りていません。外用薬の本来の効果を発揮するためには、Finger Tip Unit(軟膏をチューブから人差し指の第一関節まで出した量で手のひら2枚分の面積を外用する)という外用法が必要で、実際に塗ると、かなりべたべたに塗らないといけないことがわかります。この指導だけで、これまで改善しなかったケースの大半を軽快できます。それでも改善しきれない難治例では、免疫抑制剤内服や光線療法が必要となることもあります。
このようにADの治療は確立されていますので、信頼できる皮膚科専門医に定期的に受診しましょう。
◆櫻井直樹(さくらい・なおき)02年、東大医学部卒。東大付属病院、関連病院に勤務後、美容外科クリニック勤務を経て千葉県松戸市にシャルムクリニック開設、他院皮膚科顧問も歴任。皮膚科専門医、レーザー専門医。