【松本浩彦医師】お酒との付き合い方…意外に残るアルコール 週1度は「休肝日」を
【Q】肝臓の数値があまり良くありません。お酒を控えた方がいいと言われますが、お酒との付き合い方を教えてください。(60代・男性)
【A】まずは肝臓でのアルコールの代謝時間を知っておきましょう。血液検査で「γ-GTP」や「尿酸値」が高いと言われた人は多いと思いますが、これらはお酒の飲み過ぎで数値が高くなる代表的な検査です。特にγ-GTPが、あまりアルコールを飲んでいるつもりはないのに数値が高い、と言う方がおられますが、こういう方ほど要注意です。
「酒が強い」ことと「肝臓のアルコール代謝能力が高い」ことは別物です。ちょっとのお酒ですぐに顔が赤くなる人でも肝機能は全く異常がない人。逆に、いくら飲んでも酔っぱらった素振りはないけど肝機能はボロボロの人。肝臓病はなかなか自覚症状が出にくいので、要注意です。
ビールを何本飲もうが、5~6時間経てば体からアルコールは抜ける」と勘違いされている方は多いのではないでしょうか。「体重1キロあたり1時間で0・1グラムのアルコールを分解できる」と考えて下さい。簡単に言うと、成人男性が肝臓で分解できるアルコール量は1時間に7cc程度。ビール大瓶1本または日本酒1合を飲むと、処理するのに3時間以上かかります。
体重70キロの人がビール500ミリリットルを2缶飲んだ場合、このアルコールを分解するのに約6時間必要となります。ビール1リットル中のアルコールは約40グラム。缶チューハイなら3本、日本酒で2合に相当します。睡眠中のアルコール分解速度は、起きている時より遅いという事も覚えておいて下さい。個人差はありますが、それ以上飲めば、半日どころか24時間アルコールが残る事もあるのです。
アルコールを分解するために大きな負担が肝臓にかかるわけですから、毎日、分解能力を超えた飲酒を続けると、脂肪肝や肝炎から肝硬変へと進行していきます。さらに最近、ウイルス性の肝炎だけでなく、アルコール性肝硬変から肝臓がんが発症するという事も判ってきました。肝臓に負担をかけないよう、高タンパクでビタミンの豊富な食事を摂りながら、日本酒なら、せめて2合程度の飲酒量にしましょう。そして、週に一日はお酒を飲まずに肝臓を休ませる「休肝日」を作ることが「肝要」です。
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、(社)日本臍帯・胎盤研究会会長。