【櫻井直樹医師】ホクロはがん化する?実は例外的なんです
【Q】足の裏に5年前からホクロができています。がんではないか心配です。(40代女性)
【A】ご心配されているのは、悪性黒色腫ではないか、ということですね。
まず、ホクロについて説明しますと、年齢ごとに全身のホクロの数を計測した研究があり、それによると、ホクロの数は年齢とともに増加し、40代がピークで、そこから減少していきます。つまり、ホクロは新しくできるものと自然に消えるものとがあり、40代までは前者が優位である、ということです。
すなわち、成人になってからできたホクロであるから悪性、ということではありません。上述したようにホクロ自身も変化するものであり、色調の変化、サイズ・高さの変化も見られますから、そのような変化が見られたから悪性、ということにもなりません。
そもそもホクロががん化するか、についてですが、最近の知見では、20センチ以上の大型先天性色素性母斑からは5%程度の確率で悪性黒色腫が発生するが、それ以外について、がん化は例外的と考えられています。すなわち、ホクロは最初から最後までホクロ、悪性黒色腫は最初から悪性黒色腫ということであり、ホクロから悪性黒色腫になる確率は正常皮膚から悪性黒色腫が発生するのと同じ確率、ということになります。
さて、足の裏は日本人の悪性黒色腫の好発部位でもあるのですが、足の裏は日本人のホクロの好発部位でもあり、しっかり鑑別する必要があります。皮膚科専門医は、既往歴・発症年齢・変化の有無を問診し、サイズを計測した上で、ダーモスコピーという専用の拡大鏡で患部を観察します。
これにより、典型的な良性の所見であればホクロでありフォロー終了、典型的な悪性の所見であれば悪性黒色腫であり摘出手術、良悪性の鑑別が困難な所見であれば全切除生検(患部を切除して組織検査)ないしは短いスパンでの重点的な経過観察となります。まずは皮膚科専門医にご相談ください。
◆櫻井直樹(さくらい・なおき)02年、東大医学部卒。東大付属病院、関連病院に勤務後、美容外科クリニック勤務を経て千葉県松戸市にシャルムクリニック開設、他院皮膚科顧問も歴任。皮膚科専門医、レーザー専門医。