【櫻井直樹医師】男性型脱毛症は早期受診、投薬治療で治したい
【Q】最近頭頂部の毛が薄くなってきました。父親もザビエルのようになっていて、自分もそうならないか心配です。(30代男性)
【A】お困りの症状は、男性型脱毛症(AGA)ですね。AGAは、早いと20歳代前半から年齢とともに頭髪が薄くなる脱毛症で、日本人男性の3分の1が発症します。
原因としては、男性ホルモン(テストステロン)が、2型5αレダクターゼという酵素(主に頭頂部・前頭部に発現)によってジヒドロテストステロンというホルモンに変換され、その作用により、硬毛から軟毛(うぶ毛)になり、結果、頭頂部・前頭部の毛が薄くなっていきます。
国内承認治療薬(いずれも保険適応外)としては、内服薬のデュタステリド、フィナステリド、外用薬のミノキシジルが挙げられます。他にも国内未承認治療としてミノキシジル内服薬や頭皮に成長因子を注射する方法など多数あります。
デュタステリド、フィナステリドはともに元々前立腺肥大症の治療薬でしたが、内服していた人がAGAも改善したため、AGAの治療薬として使われるようになりました。いずれも2型5αレダクターゼを阻害することにより効果を発揮します。両者とも大きな副作用もなく安全に使える薬剤です。
ミノキシジルは元々高血圧の治療薬でしたが、内服していた人がAGAも改善したためAGAの治療薬として使われるようになりました。毛乳頭細胞を刺激して毛母細胞の増殖を促す成長因子を出させる作用があることが分かっており、外用薬は育毛剤として市販されています。同内服薬は全身に作用するため、全身の毛が濃くなります。
これら薬剤で効果が不十分な場合は、注射治療や植毛手術が必要となることもあります。AGAはかなり進行してしまうと、投薬治療のみでは効果が限定されることから、早期に皮膚科を受診し治療を開始することがおすすめです。
◆櫻井直樹(さくらい・なおき)02年、東大医学部卒。東大付属病院、関連病院に勤務後、美容外科クリニック勤務を経て千葉県松戸市にシャルムクリニック開設、他院皮膚科顧問も歴任。皮膚科専門医、レーザー専門医。