【櫻井直樹医師】隆起するイボ…気になったら専門医に

 【Q】顔に黒いできものができて盛り上がってきました。皮膚科で年齢性のイボだから放っておいていいと言われましたが、目立つので気になります。(50代男性)

 【A】お困りの症状は、脂漏性角化症(老人性疣贅)という、良性の腫瘍です。脂漏性角化症はシミが成長して隆起してくるもので、早くは20代から発症し、80代以上では100%の人に生じるとされています。

 メラニン色素を産生して褐色から黒色を呈するものが多く、自覚症状はありませんが、時に軽度のかゆみや痛みを伴うこともあります。露光部位(紫外線にあたる部位)に生じやすいですが、手のひらと足の裏以外、全身の皮膚に生じ得ます。ダーモスコピーという拡大鏡で観察すると特徴的な所見があり、診断は容易です。

 良性の腫瘍で基本的には治療の必要性はありませんが、悪性腫瘍(皮膚がん)との鑑別が問題になるケースでは切除や組織検査を実施することもあります。脂漏性角化症と悪性腫瘍が併発した学会報告もありますが、本症が悪性化したのではなく、衝突腫瘍(たまたま2つの腫瘍が隣接して併存したもの)と考えられています。

 治療を希望する場合は、液体窒素療法やレーザーによる治療となります。液体窒素療法はマイナス196度の液体窒素を噴霧ないしは圧抵することにより患部を壊死させる方法で、簡便ですが複数回の治療が必要となることが多い方法です。

 レーザー治療は、炭酸ガスレーザーやエルビウムYAGレーザーなどにより、患部を蒸散させて一度で取ることができますが、1週間程度はすり傷状になるためテープ保護が必要となります。いずれの方法も、本症と確定診断をつけてから行うべき方法であり、診断がついていない状態で行ってはならないのは強調したい点です。

 他院で本症と言われて液体窒素療法をしたが変化しなかった、あるいはレーザーをしたがすぐ再発したとのことで受診され、組織検査した結果、実は皮膚がんだった、という経験があります。そのため、気になるできものは、まず皮膚科専門医にご相談ください。

 ◆櫻井直樹(さくらい・なおき)02年、東大医学部卒。東大付属病院、関連病院に勤務後、美容外科クリニック勤務を経て千葉県松戸市にシャルムクリニック開設、他院皮膚科顧問も歴任。皮膚科専門医、レーザー専門医。

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