【荒木正医師】効果のある糖尿病薬 副作用の心配は
【Q】健診で糖尿病と診断され、現在DPP-4阻害薬を飲んでいます。どんな副作用に注意したらいいでしょうか。(50代女性)
【A】食事をして血糖値が上昇すると腸管からインクレチンと呼ばれるホルモンが分泌されます。インクレチンは、すい臓に作用してインスリン分泌を促し血糖値を低下させますが、このインクレチンの分解を阻害することでインスリン分泌を増やし、血糖値を低下させる薬がDPP-4阻害薬です。
2009年12月に発売されて以来、肥満や低血糖などの副作用を起こしにくく、高血糖を改善するために、現在国内で最も使用されている糖尿病薬となっています。食事をしないときはインスリン分泌を促さないため、血糖値が下がり過ぎることによる低血糖は起こりにくい上、すい臓への負担も少ないといった特徴があります。
また、インクレチンには食欲中枢に作用して食欲を抑える働きや、ナトリウムの排泄を促す作用があるため心臓の負担を和らげる効果もあります。最近では週1回の内服で効果が十分なDPP-4阻害薬も使用されており用途も広がっています。
しかし、副作用が全くないわけではありません。DPP-4阻害薬は食事をしたときだけ効果が表れることから、単剤の服用では低血糖を起こしにくいのですが、直接すい臓に働きかけてインスリン分泌を促す薬であるSU薬との併用で低血糖が生じやすくなることが知られています。
他にも頻度は少ないですが、便秘、腹部膨満、急性すい炎、腸閉塞などの副作用があります。また1型糖尿病や重症2型糖尿病の方のように、インスリン分泌がされていない方にはDPP-4阻害薬でインスリンの分泌を促そうとしても、インスリンの分泌がないことから効果がなく注意が必要です。
DPP4阻害薬は効果が多く、副作用も少ないことから広く使われています。かかりつけ医師の指導のもと、食事・運動量療法をしっかり行いながら飲んで頂ければと思います。
◆荒木 正(あらき・ただし)03年、東邦大学医学部卒。東邦大学医療センター大橋病院などに勤務後、16年に東京都江東区に亀戸内科クリニック開設。循環器・糖尿病内科医として地域に密着。総合内科専門医。循環器専門医。