【櫻井直樹医師】「ほくろ」は本当かどうかまず確認 診断により変わる治療法
【Q】以前から鼻にほくろがあり、少しずつ成長して盛り上がってきた(現在直径8ミリ)ので取りたいのですが、どのように治療するのでしょうか?(60代男性)
【A】ほくろの治療を希望されて受診される患者さんは多いのですが、まず大切なのは、果たしてそれが本当に「ほくろ」なのか、の診断です。
ほくろのように見えてほくろではないもの、例えば、脂漏性角化症(老人性のイボ)や皮膚癌などとの鑑別をする必要があります。診断によって治療方法が変わってくるためです。まずダーモスコピーという専用の拡大鏡で観察し、皮膚癌(がん)を疑う所見があれば、通常はいきなり切除するのではなく組織検査をすることになります。
ここでは、ダーモスコピーで観察して良性のほくろと診断した場合の話を続けていきます。ほくろは、発症ごく早期のもの(単純黒子)を除き、真皮層にまで細胞が存在しますから表面だけを削っても再発します。そのため、しっかりと取り除く必要があり、代表的治療方法としては、手術、レーザー(炭酸ガスレーザー、エルビウム・ヤグレーザー)が挙げられます。
レーザーは、局所麻酔後にほくろを表面から少しずつ蒸散させて削り取っていき、穴をあけて治す方法で、術後の湿潤療法(創傷被覆材などを貼付し傷を乾かさないようにする)も重要です。メリットとしては、簡単・傷跡が小さいという点、デメリットとしては、再発の可能性がある・ニキビ跡のような小さい凹みを残すことがあるという点です。
一般的には顔の5ミリ未満の小さいほくろがよい適応とされます(医師によって見解が異なる場合もあります)。そのため、それにあてはまらない場合が手術ということになります。
ほくろの手術は単純切除・縫合がほとんどですが、鼻やまぶた・口唇などのように引きつれや変形が出る可能性のある部位では、傷の閉鎖に皮弁形成というテクニックが必要となる場合もあります。ご相談の症状の場合は、双葉皮弁形成などが必要となるでしょう。
◆櫻井直樹(さくらい・なおき)02年、東大医学部卒。東大付属病院、関連病院に勤務後、美容外科クリニック勤務を経て千葉県松戸市にシャルムクリニック開設、他院皮膚科顧問も歴任。皮膚科専門医、レーザー専門医。