【Ｑ】冬場に寒いところから急に暖かいところに出たりすると「ヒートショック」になると聞きました。今年は特に寒くて、風呂に入るのが怖い。防ぐ方法はありますか。（７０代男性）

　【Ａ】ヒートショック。寒暖差のあるところに移動したときに、血圧や脈拍が急変することです。高齢者の方は特に気を付けて頂きたいと思います。

　夏でも起こるのですが、やはり寒い冬に起こり易く、死亡例が寒い冬の季節に増えることは必至です。血圧や脈拍の急変により、脳卒中や心筋梗塞、不整脈などが起こりやすくなります。

　暖かい部屋から寒い脱衣場に入ると、血管が収縮し、血圧、脈拍が上昇します。そこから更に寒い浴室に入ると血管への負担が大きくなります。浴槽につかると、収縮した血管が一気に拡張します。身体を洗うときや服を着るときには再び寒さで血管が収縮します。入浴という短時間で、血管に激烈な変化が起きているのです。

　詰まりかけていた血管が急激な温度変化にさらされて必要以上に収縮し、血流障害を起こし、脳梗塞や心筋梗塞が起きやすくなります。トイレも危険です。暖かい部屋から寒いトイレに入ると急激に血圧、脈拍が上昇します。その後に、便秘の人などは排便をするときに思い切り気張ったりすると更に血圧、脈拍が上昇します。

　トイレはもう一つ注意しないといけません。排便後に緊張がとけて、一気に血圧が低下します。脳に血液がいかなくなり、意識障害を来すことがあるのです。また頭部や顔面を打撲し、２次災害を招くことがあります。

　マンションなどで気密性が高く、脱衣場、風呂場など温度差が少ない住宅なら、リスクは少ないと思われます。一軒家や、木造住宅にお住まいの方は、要注意です。家の中でも、温度差がかなりあります。

　可能なら暖房機などを使い、お風呂に入る前に脱衣場、お風呂場を温めておくことをお勧めします。浴室全体を温める方法として、高い位置からシャワーで浴槽を満たすことも有効なようです。脱衣場、浴室の温度差は５度以内が推奨されています。風呂の温度も熱すぎない３８～４０度くらいがお勧めです。

　浴槽にも一気に入るのではなく、かけ湯をしてから入ることも大切でしょう。また、元気な方に一番風呂に入ってもらい、高齢の方が最後に入れば、お湯も適当に撹拌（かくはん）され、浴室内も１番風呂の時よりも温まっています。今は核家族化が進んでいるので難しいかもしれませんね。話はそれますが、昔、男が一番風呂に入るとされた理由は、こういったことが原因かもと思っています。

　トイレも、便座を温めたり、人感センサー付きの暖房器具を準備するなどできるだけ温度差を感じにくい環境を整えることが大切です。高齢の方は、動脈硬化を伴っていることが多く、急激な温度変化が命に関わることもあります。お気をつけてください。

　◆谷光利昭（たにみつ・としあき）たにみつ内科院長。９３年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。０６年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。