【谷光利昭医師】九州の医師から手紙…体はつながっていることを再認識
私のコラムを読んで思うところがあると、佐賀県の歯科医で医学博士でもある佐々木茂先生から連絡を頂いた。8月の「余命宣告」の記事である。感銘を受けたという内容のお手紙と一緒に、先生の著書「からだの不調とかみ合わせ」も同封されていた。
佐々木先生は、かみ合わせを御専門にされているようだ。本は375ページにも及ぶ力作。大変丁寧に書いておられるので、時間をかけて拝読した。
特に興味深かったのは、歯のかみ合わせの不具合が、頭痛、肩こり、ドライマウス、膝痛、腰痛、目の不快など多くの症状と関係することもあるということだ。
佐々木先生が、患者さんのかみ合わせの不具合を治癒に導くと、それらの症状や他の症状も改善されたと記されている。「食べる」ということは、生の根源に関わっているのに、咀嚼(そしゃく)、かみ合わせなどに無頓着だったことを反省した。
我々医師は病気を診る際に体の一部だけを診てしまう傾向があるように思う。「木を見て森を見ず」になっていることが多々ある。体は部分部分ではなく、本当はすべてがつながっていて、手、足、内臓などの不調が全身に影響することは明白。特に食に関わる口腔は、生をつなげる重要な部分で、その部分が悪くなると様々な不調を来すことを改めて認識した。
西洋医学で言うと、様々な症状に明確な答えを提示できるのは、限られた疾患だけのようにも感じる。もちろん、私の勉強不足もあるだろう。ただ、今回のお手紙は、専門分野がどんどん細分化され、全身に関われる医師が少なくなってきている現状を考えると、一つの「警鐘」にも思えた。
ミクロとマクロ、両方の世界から物事を捉えて、偏った考え、行動を慎まなければならない…私はそう教えて頂いたよう感じた。
◆筆者プロフィール 谷光利昭(たにみつ・としあき)兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。デイリースポーツHPで「町医者の独り言」を連載中。