【松本浩彦医師】がん発症リスクに究極の予防法あり 実現は近いが…問題は値段の高さ
ハリウッド女優が以前、乳腺と卵巣を摘出して話題になりました。がん抑制遺伝子「BRCA1」に欠陥が見つかり、乳がん・卵巣がんになるリスクが高いことから行った予防的手術です。分子生物学の進歩で、将来かかるであろう病気が、遺伝子検査で診断できる時代になりつつあります。
がん治療で一番大切なことは、早期発見・治療とされています。早期発見の主力は画像診断ですが、遺伝子検査の発達により画像で発見される前、つまり発症リスクの段階で発見されるようになっています。
遺伝子検査は大きく2つに分けられます。親から受け継いだがんリスクを診断する「DNA検査」と、生活習慣などが原因で後天的に生じたがんリスクを診断する「mRNA検査」です。がんの遺伝的リスクは5%、残りの95%は生活習慣が原因で発症します。「未病」という概念は病気を発症前の状態で発見し、病気になる前に治療するという考え方で、遺伝子検査の発達により、その究極の予防法がまさに実現されつつあります。
DNA検査は唾液や頬の粘膜をこするもので、多くの医療機関で受けられますが、判明した遺伝的な病気リスクは生涯変わりません。一生に一度の検査で充分です。一方mRNA検査は3ccほどの採血が必要ですが、リアルタイムで病気のリスクがわかり、現在のところ十数種類のがんの発症リスクを数値で知ることができます。
全てのがんには、それぞれアクセルとブレーキの役割を果たす遺伝子があります。これらの遺伝子が、いま現在オンになっているかオフになっているかを調べて、がん発症のリスクを高い精度で予測するのがmRNA検査ですが、この検査、いまのところ値段が非常に高いのが玉にきずです。
◆筆者プロフィール 松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。