【松本浩彦医師】葛根湯はすごい薬だった! 風邪だけではなく…幅広い薬効

 「頭が痛い?葛根湯をおあがり。次は胃痛?葛根湯をおあがり。今度は筋肉痛?葛根湯をおあがり。次は…」「先生、私は単なる付き添いですが」「付き添い?退屈でしょう、葛根湯をおあがり…」。古典落語に「葛根湯医者」というネタがありまして、昔は免許制度がなかったため誰でも医者を名乗ることができたようで、そんなヤブ医者を揶揄するというオチなんですが、実は葛根湯という薬は、本当に何にでもよく効く、適応範囲の広い良薬なんです。

 風邪のひき始め、肩こり、乳腺炎から歯痛に慢性頭痛。主作用は血行を良くして体を温める薬で、気管支拡張作用もあるので喘息にも効きますし、その他、薬効は枚挙にいとまがありません。葛餅の原料である葛(くず)の根が主成分です。風邪をひいた時の民間療法として、クズ湯やショウガ湯を飲んで体を温めたご経験、あるのではないですか。

 年配の方ならご存知でしょうが、50年ほど昔「うどん屋のカゼ薬」というのがありました。うどん屋さんで風邪薬を売ってたんですね。きつねうどん一杯80円とかいう時代です。カゼをひいたらうどん屋さんに行って、熱々の鍋焼きうどんを食べて、一袋20円のカゼ薬を買って飲むと、本当にカゼ症状がピタッと治まったものです。そしてこのうどん屋のカゼ薬、実は葛根湯だったんですね。医薬品ですので、うどん屋さんが売ったら薬機法違反になりますから、いつしか無くなり、忘れ去られてまったのです。

 葛根湯は、ちょっと寒気がするとか、なんか頭が重いとか、カゼをひきそうなタイミングで飲んでください。風邪の典型的症状が出てしまったらもう葛根湯は手遅れです。あきらめて医療機関を受診してください。

◆松本 浩彦 芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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