【谷光利昭医師】不摂生でない若年者でも脳出血を起こす脳動静脈奇形とは

 27歳の俳優、清原翔さんが先月、脳出血で緊急手術されました。報道後、若い人から質問を受けたこともあり、この病気について説明します。

 脳は最も重要な臓器です。重さは約1400グラムにすぎませんが、酸素消費量は全身の約20%、ブドウ糖も全摂取量の25%を消費します。また、心拍出量の15%が脳に流れています。この小さな臓器は血管に負荷がかかりやすく、病気が起こりやすいと言えます。

 脳の血管の病気には脳梗塞、脳出血があります。梗塞とは血管が詰まる病気の総称で、脳出血は血管が破れる病気の総称です。出血には、脳の中で出血が起こる脳内出血と脳のすきまで起こるくも膜下出血に分けられます。脳出血の多くは、食べ過ぎ、塩分過多、酒の飲み過ぎなどからくる高血圧で引き起こされるとされています。不摂生な中高年に多いですが、例外的に小児から若年成人に起こる脳出血があります。

 脳動静脈奇形という先天性の脳の血管の病気があると、若年者で不摂生でなくても脳出血することがあるのです。脳には動脈から毛細血管を介して栄養分や酸素が送られ、その後に静脈を介して心臓に戻ります。この病気は、動脈と静脈の間に毛細血管がなく代わりにナイダスという異常に拡張したかたまりが存在します。高い圧の動脈からの血液が大量に直接、ナイダスや壁の薄い静脈に流れ込み、破裂して出血することがあるのです。

 脳動静脈奇形はナイダスの大きさやどの部分にあるのか、どのように静脈が流れているのかなどにより予後は変わります。治療は基本的にナイダスの摘出術を行いますが、場所によってはできないこともあり、その場合は、血管を詰めたり、放射線治療を行ったり、これらを組み合わせて治療します。治療に難渋するケースもあり、まだまだ課題の多い病気の一つです。

◆谷光利昭(たにみつ・としあき)兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。デイリースポーツHPで「町医者の独り言」を連載中。

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