【尾原徹司医師】猛暑に急増するペットボトル症候群 清涼飲料水のとり過ぎによる急性糖尿病に要注意
例年とは違い、マスク着用がエチケットとなった今年の夏。マスクをしていると、のどの渇きが分かりにくいため、水分補給が遅れるといわれています。ですから熱中症対策のためには、こまめに水分を取ることが重要です。しかし、気をつけたいのは水分の取り方。一つ間違えると「ペットボトル症候群」を引き起こすことがあります。正式名は「ソフトドリンク(清涼飲料水)ケトーシス」といいます。
■暑い日は要注意?
「暑い日は汗も出やすく、のども乾いて、自動販売機を見つけては冷たい飲み物をつい買ってしまう」という声が少なくありません。その時、どんな飲み物を買うかが問題です。スポーツドリンクやジュース、炭酸飲料などの清涼飲料水をよく飲むという人は「ペットボトル症候群」に注意してください。
というのも、スポーツドリンクや清涼飲料水には通常100mlあたり5g~10g前後の糖分が含まれているものが多いといわれています。角砂糖は1個約4g。もし、1リットル飲めば、角砂糖を10数個から25個を食べているようなものです。軽い気持ちで飲んでいるうちに、予想以上に糖分を取ってしまう危険性があるのです。
そこで、スポーツドリンクや清涼飲料水を飲む時は成分表もチェックしてください。カロリーオーバーにならないように、甘味料を使ったゼロカロリーやカロリーオフのものを選ぶのも一つの選択肢かもしれません。
■発症すれば、どうなるの?
暑いからといって1日に数リットル近い清涼飲料水を飲めば、たくさんの糖が一気に体に入り、一時的にインスリン不足に陥り、血糖値が急上昇します。血糖値が上がるとノドが異常に乾き、さらにガブ飲みしたりすれば、さらに血糖値が上がり、悪循環に陥ります。トイレの回数が増え、急性糖尿病の症状が現れることがあります。ひどい場合は意識がもうろうとし、激痩せすることもあります。
このようなペットボトル症候群は20代、30代に多く、近年は40代以上の中高年にも増えています。
■予防するには?
予防法は、糖分の多い清涼飲料水のガブ飲みは避けることです。しかし、水分補給は重要なので、水やお茶など糖分のないものを積極的に飲むように心掛けたいですね。暑い夏場は口当たりのいい冷たくて美味しいジュースやアイスクリームなどを食べたくなる気持ちはわかります。しかし、健康のことを考えて、ほどほどにしましょう。
◆尾原徹司 東京医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センターを経て、神戸鐘紡病院消化器科に赴任。昭和57(1982)年に独立し、医療法人社団つかさ会「尾原病院」(神戸市須磨区妙法寺荒打/神戸市営地下鉄西神山手線妙法寺駅徒歩3分)院長に。他に介護老人保健施設「コスモス苑」、「つかさ訪問看護ステーション」、「つかさ在宅ケアセンター」「人工透析センター」なども運営。