20分ほどで劇的に改善!いぼ痔の注射療法 元外科医が解説

 私は元外科医で、現役時代は肺がん、食道がんなどの大きな手術から虫垂炎、いぼ痔、脱腸などの小さな手術まで多数の手術に携わって参りました。これらの手術の中で、とりわけ患者さんに喜んで頂いた手術はいぼ痔の注射療法です。

 かつて、いぼ痔の治療は痔を切り取る手術が主流でしたが、術後に激しい痛みを伴い入院が必要です。そこで開発されたのがジオンという硬化剤を用いた痔の注射療法です。痔に薬剤を注射して固めて治す治療(硬化療法)で、切除の必要がなく痛みがほとんどありません。

 以前より硬化療法はあったのですが、効果は一時的で弱く、合併症等で手術できない患者さんに対しての代替治療でした。しかしジオンを用いた硬化療法は効果抜群で、手術に匹敵する効果が得られます。しかも日帰り治療が可能で、今ではかつての切除手術はかなり減少しました。

 毎日悩んでいた排便後の出血や脱出が、ほとんど痛みのない20分程の注射の治療だけで劇的に改善します。患者さんはがんが治った時と同等、もしくはそれ以上に大変喜んでくれます。それが私が今でもクリニックで痔の注射療法を続けている理由です。自分の行った治療で患者さんに喜んで頂けるのは私にとっても非常なる喜びで、仕事のモチベーションでもあります。

 この治療の良い適応は、脱出や出血を伴う内痔核(いぼ痔)ですべての痔が適応になるわけではありません。腎機能が悪い方もこの治療を受けることができません。切除術に比べ少し再発が多いというデメリットもあります。

 しかし、排便のたびに痔の脱出、出血、痛み等に悩まされている方にとって福音となる可能性がありますので、前述の症状がある方は専門医にご相談ください。

 ◆西岡清訓(にしおか・きよのり)兵庫県尼崎市の「にしおか内科クリニック」院長。呼吸器、消化器疾患を中心に一般内科診療などを行っている。

編集者のオススメ記事

ドクター備忘録最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス