「マスク生活で免疫が低下」は間違い 現役医師が理由を解説

 このところ小児の間で様々な感染症が流行しており、小児科の先生方は大忙しです。RS、溶連菌、アデノ、ヘルパンギーナ、手足口病、突発性発疹。これはウイルス干渉の観点から考えると、新型コロナの勢力が弱まってきたとも考えられますが、実際のところ新型コロナも、密かに流行を続けてます。

 ところが「新型コロナ対策でマスクをつけていたために、子供の免疫力が落ちた」「新型コロナワクチンを接種したから、免疫が低下した」「子供にもっと風邪をひかせておくべきだった」などという間違った説が広まっています。「現在のインフルエンザの流行は、コロナ禍のマスク生活でインフルへの免疫が一斉に落ちたことが原因」という報道までありましたが、これは明らかに根拠を欠いています。「マスク生活で、インフルへの免疫が一斉に落ちた」など、笑止千万です。

 では今、多くの感染症が流行しているのはなぜでしょう。それは新型コロナが5類になって感染対策がゆるみ、人流が回復したからです。国内の旅行者も、海外からの旅行者も大幅に増えています。実際のところ、小児感染症の患者数は、コロナ禍前よりも増えていません。2020~22年よりも少し増えた、言い換えれば、コロナ前と同程度に戻っただけです。

 マスク着用は個人の判断となりましたが、周囲に感染を広げないためにも、ご自身を守るためにも、医療機関、高齢者施設、混雑した場所では着用したほうがいいのです。日本医師会も厚労省も、それらの場所でのマスクの着用を推奨しています。新型コロナが5類になり、必要以上に怖がらなくとも、油断してはいけません。間違った情報に振り回されず、自分の健康は自分で守りましょう。

 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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